- 地価公示の手続の流れ(土地鑑定委員会 → 2人以上の不動産鑑定士 → 審査・調整 → 官報で公示)と「毎年1月1日・3月公示」
- 標準地の選定基準と、「正常な価格」=更地としての価格という考え方
- 公示価格の効力の使い分け:一般の取引者は「指標」(努力義務)/鑑定士・公共事業は「規準」(義務)
- 不動産鑑定評価基準の価格の種類4つ(正常価格・限定価格・特定価格・特殊価格)の見分け方
- 鑑定評価の3手法(原価法・取引事例比較法・収益還元法)と、試算価格の調整
例年、地価公示法と不動産鑑定評価基準のどちらか1問が出題されます(両者が交互に出題される傾向があります)。覚える量は税法よりずっと少なく、条文の言い回しがそのまま問われるので、1問確保が目標です。
地価公示法は何のための法律か
土地には決まった定価がありません。同じ土地でも売主の希望額、買主の言い値、相続税の評価額、固定資産税の評価額とバラバラの数字が並びます。そこで国が「この地点の土地なら1平方メートルあたりいくらが妥当か」という物差しを毎年公表しているのが地価公示です。
地価公示法1条は、標準地を選定してその正常な価格を公示することにより、一般の土地の取引価格に対して指標を与え、公共の利益となる事業の用に供する土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もって適正な地価の形成に寄与することを目的とすると定めています。「一般の取引の物差し」と「公共事業の用地買収の物差し」という2つの顔がある、と押さえてください。この2つの顔が、後で学ぶ「指標」と「規準」の使い分けにそのままつながります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公示する主体 | 土地鑑定委員会(国土交通省に置かれる合議制の機関) |
| 対象 | 公示区域内の標準地 |
| 頻度 | 毎年1回 |
| 鑑定評価 | 2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求める |
| 公示する価格 | 標準地の単位面積当たりの正常な価格 |
| 価格判定の基準日 | 毎年1月1日(法2条1項の「一定の基準日」を施行規則2条が1月1日と定める) |
| 公示の方法 | 官報で公示(例年3月下旬) |
地価公示の手続 — 誰が・いつ・何をするか
手続は6ステップです。主語がすべて土地鑑定委員会である点(国土交通大臣ではありません)と、鑑定評価だけが不動産鑑定士の仕事である点を、図で押さえてしまいましょう。
不動産鑑定士が標準地を鑑定評価するときは、次の3つを勘案しなければなりません(4条)。この3つは、後で学ぶ鑑定評価の3手法(取引事例比較法・収益還元法・原価法)にそれぞれ対応しています。
- 近傍類地の取引価格から算定される推定の価格
- 近傍類地の地代等から算定される推定の価格
- 同等の効用を有する土地の造成に要する推定の費用額
公示された後の流れも問われます。土地鑑定委員会は、公示をしたときは速やかに、関係市町村の長に対し、その市町村が属する都道府県に存する標準地に係る公示事項を記載した書面及び図面を送付しなければなりません。送付を受けた市町村長は、これを当該市町村の事務所において一般の閲覧に供しなければなりません(7条)。「請求があった者にだけ見せる」のではなく、備え置いて誰でも見られるようにする義務です。
次に、公示される中身を確認します。公示事項でないものを選ばせる出題が定番です。
| 事項 | 公示されるか |
|---|---|
| 標準地の所在の郡・市・区・町村・字および地番 | ○ |
| 単位面積当たりの価格および価格判定の基準日 | ○ |
| 標準地の地積および形状 | ○ |
| 標準地およびその周辺の土地の利用の現況 | ○ |
| 前年からの地価の変動率 | ×(公示事項ではない) |
| 標準地の所有者の氏名 | ×(公示事項ではない) |
「1月1日に測って、3月に官報」。そして「公示するのは委員会、大臣ではない」。この2フレーズで、手続の主語と時期を問う肢はほぼ処理できます。「価格は周辺の土地の利用の現況まで公示するのに、変動率は公示しない」——公示するのは今年の水準そのものであって、去年との比較ではない、と理由で覚えると忘れません。
地価公示とよく対比されるのが、国土利用計画法施行令に基づく都道府県地価調査です。こちらは都道府県知事が基準地の価格を判定し、基準日は毎年7月1日です。地価公示(土地鑑定委員会・標準地・1月1日)と主体・呼び名・基準日がすべて違うので、混同しないようにしてください。
地価公示法および不動産鑑定評価基準について、2026年度(令和8年度)試験に向けた制度改正はありません。この分野は条文・基準の文言が長年変わっておらず、過去問の論点がそのまま使える数少ない分野です。安心して過去問演習に時間を投下してください(なお、地価公示そのものは毎年更新されるため、公示された金額の水準が問われることはありません。問われるのは常に「制度のしくみ」です)。
標準地の選定と「正常な価格」
まずどこから選ぶかです。標準地は公示区域の中から選ばれます。公示区域とは、都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域をいい、国土利用計画法の規制区域は除かれます。ここから2つの結論が出ます。
- 都市計画区域外にも公示区域はありうる——「標準地は都市計画区域内から選ばれる」と言い切る肢は誤りです
- 規制区域内の土地は標準地に選定されない——規制区域は土地取引に許可が必要で自由な取引が行われない区域なので、「自由な取引で通常成立する価格」を観測する場所として適さないからです
次にどんな土地を選ぶかです。土地鑑定委員会は、自然的および社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる一団の土地について標準地を選定します(3条)。ポイントは「通常」と「一団」です。極端に立派な土地でも極端に劣った土地でもない、その地域の標準的・平均的な土地を選ぶということ、そして1筆の土地に限られない(複数の筆でも一団としてまとまっていればよい)ということです。また、借地権など土地の使用収益を制限する権利が付いている土地であっても、標準地に選定することは可能です。
そして最重要の正常な価格の定義です(2条2項)。正常な価格とは、自由な取引が行われるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格をいいます。さらにカッコ書きが決定的で、その土地に建物その他の定着物がある場合、または地上権その他その土地の使用もしくは収益を制限する権利が存する場合には、これらの定着物または権利が存しないものとして通常成立すると認められる価格をいいます。つまり、実際には建物が建っていても借地人がいても、地価公示では更地としての価格を出すということです。
公示価格の効力 — 「指標」と「規準」
この章で最も出題される論点が、公示価格を誰がどこまで尊重しなければならないかです。相手によって拘束力が違い、条文の言葉も「指標」と「規準」で明確に書き分けられています。
まず指標です。都市およびその周辺の地域等において土地の取引を行う者は、取引の対象土地に類似する利用価値を有すると認められる標準地について公示された価格を指標として取引を行うよう努めなければなりません(1条の2)。これは努力義務であって、公示価格と違う価格で売買しても違法ではなく、罰則もありません。「指標としなければならない」「公示価格を超える価格で取引してはならない」といった強い言い回しの肢は、すべて誤りです。
次に規準です。次の3つの場面では、公示価格を規準とすることに関する法的義務が課されます。ただし義務の形は同じではなく、①②は「公示価格を規準としなければならない」、③は「公示価格を規準として算定した価格を考慮しなければならない」と条文の言い回しが異なります。
| 区分 | 場面 | 条文上の効力 |
|---|---|---|
| 指標 | 都市およびその周辺の地域等で土地の取引を行う者 | 指標として取引を行うよう努めなければならない(努力義務・罰則なし) |
| 規準 | 不動産鑑定士が公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において、その土地の正常な価格を求めるとき | 公示価格を規準としなければならない(義務) |
| 規準 | 土地収用法等により土地を収用できる事業を行う者が、公示区域内の土地を事業の用に供するため取得する場合の取得価格を定めるとき | 公示価格を規準としなければならない(義務) |
| 規準 | 収用する土地に対する補償金の額を算定するとき | 公示価格を規準として算定した価格を考慮しなければならない(義務) |
鑑定士について注意すべきは、義務が生じるのは公示区域内の土地について正常な価格を求めるときに限られる点です。公示区域外の土地の鑑定評価や、限定価格・特定価格・特殊価格を求める場合には、この義務は及びません。
最後に、「規準とする」とは何をすることかも条文に定義があります(11条)。対象土地の価格を求めるにあたり、対象土地とこれに類似する利用価値を有すると認められる1または2以上の標準地との位置・地積・環境等の土地の客観的価値に作用する諸要因について比較を行い、その結果に基づいて標準地の公示価格と対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいいます。「公示価格をそのまま採用すること」ではなく、「比較して釣り合いを取ること」です。また、規準とする標準地は1つとは限りません。
「一般人は指標で努力、プロと公共は規準で義務」。指と規、努力と義務をセットで音にして覚えます。もう一段、「規準=比較して均衡を保たせること(そのまま使うことではない)」まで言えれば、この論点は完成です。
不動産鑑定評価基準の土台 — 価格形成要因と地域分析
ここからは不動産鑑定評価基準です。これは法律ではなく、国土交通省が定める鑑定評価の統一ルールで、試験ではその文言がほぼそのまま出題されます。
不動産の価格を形成する要因(価格形成要因)は3つに分類されます。一般的要因(自然的・社会的・経済的・行政的要因のように、一般経済社会における不動産のあり方とその価格水準に影響を与える要因)、地域要因(その地域の特性を形成し、地域の価格水準に影響する要因)、個別的要因(その不動産に固有の個別性を生じさせ、その価格を個別化・具体化させる要因)です。
価格に関する諸原則のうち、試験で最も重要なのは最有効使用の原則です。不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(最有効使用)を前提として把握される価格を標準として形成される、という原則です。現実の利用状況が最有効使用でない場合でも、最有効使用を前提に評価する——ここが「現況のままで評価する」というひっかけを切るポイントです。
そして、その最有効使用を判定するために行うのが地域分析と個別分析です。地域分析では、対象不動産がどのような地域に存し、その地域がどのような特性を持つかを判定します。押さえるべき3つの地域概念を図で整理します。
- 近隣地域:対象不動産が属する用途的地域で、居住・商業活動・工業生産活動等に関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域
- 類似地域:近隣地域の地域の特性と類似する特性を有する地域
- 同一需給圏:対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域。近隣地域を含んでより広域的
これに対して個別分析とは、対象不動産の個別的要因が対象不動産の利用形態と価格形成についてどのような影響力を持っているかを分析して、その最有効使用を判定することをいいます。地域分析で「この地域では標準的にどう使うのが最も効率的か」を掴み、個別分析で「では、この不動産固有の間口・形状・接道といった事情を踏まえるとどうか」を詰める——という二段構えだと理解してください。
なお、鑑定評価額の判定の基準となる日を価格時点といいます。価格時点は現在だけでなく、過去時点・将来時点もありえます。「価格時点は鑑定評価を行った日でなければならない」といった肢は誤りです。
価格の種類 — 正常・限定・特定・特殊
鑑定評価で求める価格は4種類あり、市場性があるかとどんな事情でずれるかで判定します。まず判定チャートで全体像を掴んでください。
| 種類 | 市場性 | 内容と具体例 |
|---|---|---|
| 正常価格 | あり | 現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格。鑑定評価額は原則としてこれ |
| 限定価格 | あり(市場が相対的に限定) | 併合・分割によって正常価格と乖離する場合の価格。例:借地権者が底地を併合する場合の底地の価格/隣接地の併合を目的とする売買/経済合理性に反する分割を前提とする価格 |
| 特定価格 | あり | 法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合の価格。例:資産の流動化(証券化)における投資採算価値/民事再生法に基づく早期売却を前提とする価格/会社更生法・民事再生法に基づく事業継続を前提とする価格 |
| 特殊価格 | なし | 一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした価格。例:文化財の指定を受けた建造物/宗教建築物 |
なお、鑑定評価は価格だけでなく賃料についても行われ、賃料には正常賃料・限定賃料・継続賃料の3種類があります。価格の4種類と混同しないようにしてください(賃料に「特殊賃料」はありません)。
鑑定評価の3手法 — 原価法・取引事例比較法・収益還元法
不動産の価格を求める手法は3つあり、それぞれ費用性・市場性・収益性という異なる側面から価格にアプローチします。求められた価格は試算価格と呼ばれ、手法ごとに名前が違います。
原価法 — 費用性に着目(積算価格)
原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って試算価格(積算価格)を求める手法です。「今もう一度これを作るといくらか」から「古くなった分を差し引く」という考え方です。
減価修正の方法には耐用年数に基づく方法(定額法・定率法等)と観察減価法があり、原則として両者を併用します。減価の要因は物理的要因(摩滅・破損・老朽化)、機能的要因(設備の不足・設計の陳腐化)、経済的要因(近隣地域の衰退・不動産と環境の不適合)の3つです。
適用場面で頻出なのは次の点です。原価法は対象不動産が建物または建物およびその敷地である場合に有効ですが、対象不動産が土地のみである場合でも、再調達原価を適切に求めることができるとき(造成地・埋立地など)は適用できます。「土地には原価法を適用できない」は誤りです。
取引事例比較法 — 市場性に着目(比準価格)
取引事例比較法は、多数の取引事例を収集して適切な事例を選択し、それらの取引価格に必要に応じて事情補正および時点修正を施し、かつ地域要因の比較および個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、試算価格(比準価格)を求める手法です。手順を図で押さえます。
事例の選択には要件があります。近隣地域または同一需給圏内の類似地域等に存する不動産の事例であること、取引事情が正常と認められるか正常なものに補正できること、時点修正が可能であること、要因の比較が可能であることです。ここから、投機的取引と認められる事例は採用できません(補正のしようがないほど価格形成が歪んでいるためです)。また、対象不動産と類型の異なる複合不動産(土地建物一体)の取引事例から、土地部分など対象と同じ類型の価格を抜き出して使う方法を配分法といいます。
収益還元法 — 収益性に着目(収益価格)
収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより試算価格(収益価格)を求める手法です。方法は2つあります。
- 直接還元法:一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法
- DCF法:連続する複数の期間に発生する純収益および復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法
試験で最も狙われるのは適用範囲です。収益還元法は賃貸用不動産や事業用不動産に特に有効ですが、自用の不動産であっても、賃貸を想定することにより適用できます。さらに基準は、収益還元法は文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには基本的にすべて適用すべきとしています。「自用の住宅には適用できない」という肢は誤りです。
| 手法 | 適用できる主な対象 | 注意点 |
|---|---|---|
| 原価法 | 建物/建物およびその敷地。土地のみでも造成地・埋立地等で再調達原価を適切に求められるなら可 | 「土地には適用できない」は誤り。減価修正は耐用年数に基づく方法と観察減価法を併用 |
| 取引事例比較法 | 近隣地域または同一需給圏内の類似地域等の取引事例が収集できる不動産 | 投機的取引の事例は採用不可。類型が異なる事例は配分法で対応 |
| 収益還元法 | 賃貸用・事業用のほか、自用の不動産も賃貸を想定して適用可 | 市場性を有しない不動産以外には基本的にすべて適用すべき |
最後に手法の使い方です。鑑定評価にあたっては、対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきであり、対象不動産の種類・所在地の実情・資料の信頼性等により複数の手法の適用が困難な場合であっても、その考え方をできるだけ参酌するように努めるべきとされています。「必ず1つの手法だけを選ぶ」ではありません。そして、各手法から得られた試算価格は、再吟味と説得力の判断を経て調整され、鑑定評価額が決定されます。単純平均するのではない点が繰り返し問われています。
なお、賃料を求める手法は価格の手法とは別に、積算法・賃貸事例比較法・収益分析法が定められています。価格の3手法と名前が対応していることだけ押さえておけば十分です。
ひっかけポイント
「土地の取引を行う者は、公示価格を規準として取引を行わなければならない」——誤りです。一般の取引者は指標として努める努力義務にとどまります。逆に「不動産鑑定士は公示区域内の土地の正常な価格を求めるとき、公示価格を指標としなければならない」も誤りで、正しくは規準です。言葉が2つしかないぶん、入れ替えるだけで肢が作れるため、毎回のように登場します。さらに「規準とする=公示価格をそのまま採用する」も誤りで、正しくは比較して均衡を保たせることです。
「標準地に建物が存する場合には、その建物が存する状態を前提として正常な価格を判定する」——誤りです。建物その他の定着物や、借地権など使用収益を制限する権利は、存しないものとして評価します(=更地価格)。なお「標準地は借地権が設定された土地から選定することはできない」も誤りで、選定は可能です(評価の段階で権利を外すだけです)。「選定できるか」と「どう評価するか」は別の話だと切り分けてください。
「特定価格とは、文化財の指定を受けた建造物のように市場性を有しない不動産について求める価格である」——誤りです。それは特殊価格です。特定価格は市場性がある不動産について、証券化・民事再生など法令等による社会的要請を背景とする評価目的で求める価格です。「特定=法令の事情でずれる」「特殊=そもそも市場がない」と趣旨で覚えれば取り違えません。限定価格(借地権者による底地の併合・隣接地の併合)を「市場性がないから限定」と説明する肢も誤りで、限定価格も市場性はあります。
「原価法は土地のみの場合には適用できない」「収益還元法は自用の不動産には適用できない」「鑑定評価では最も適切な手法を1つ選んで適用する」——いずれも誤りです。原価法は再調達原価が求められれば土地にも使え、収益還元法は賃貸を想定すれば自用にも使え、手法は原則として併用します。この分野の誤り肢は「できない」「〜に限る」と範囲を狭める形で作られるのが定石なので、断定的に狭める表現を見たら疑ってください。逆に「投機的取引の事例も事情補正すれば使える」のように範囲を広げる肢は誤り、という数少ない例外も押さえておきます。
一問一答で総仕上げ
Q1. 標準地の正常な価格とは、当該標準地に建物が存する場合には、その建物が存する状態を前提として通常成立すると認められる価格をいう。(○か×か)
答え: × 建物その他の定着物がある場合や、地上権その他使用収益を制限する権利が存する場合には、これらが存しないものとして通常成立すると認められる価格が正常な価格です。要するに更地としての価格を判定します。
Q2. 土地鑑定委員会は、標準地の正常な価格を判定するにあたり、1人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求めれば足りる。(○か×か)
答え: × 2人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行って価格を判定します。1人の判断に依存しないための制度設計です。
Q3. 公示区域は都市計画区域内に限られるため、都市計画区域外の土地が標準地として選定されることはない。(○か×か)
答え: × 公示区域は「都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれるものとして国土交通省令で定める区域」なので、都市計画区域外にも公示区域はありえます。なお、国土利用計画法の規制区域は除かれます。
Q4. 土地鑑定委員会は、標準地の単位面積当たりの価格のほか、前年の公示価格からの変動率も公示しなければならない。(○か×か)
答え: × 公示事項は、標準地の所在、単位面積当たりの価格と価格判定の基準日、地積および形状、標準地およびその周辺の土地の利用の現況等です。変動率は公示事項ではありません。
Q5. 都市およびその周辺の地域等において土地の取引を行う者は、取引の対象土地に類似する利用価値を有する標準地の公示価格を指標として取引を行うよう努めなければならない。(○か×か)
答え: ○ 一般の取引者に課されるのは努力義務です。公示価格と異なる価格で取引しても違法ではなく、罰則もありません。
Q6. 不動産鑑定士は、公示区域内の土地について鑑定評価を行う場合において、当該土地の正常な価格を求めるときは、公示価格を規準としなければならない。(○か×か)
答え: ○ これは義務です。ただし義務が生じるのは「公示区域内」の土地について「正常な価格」を求めるときに限られ、限定価格や特定価格を求める場合には及びません。
Q7. 公示価格を規準とするとは、対象土地の価格を1つの標準地の公示価格と一致させることをいう。(○か×か)
答え: × 規準とするとは、対象土地と1または2以上の標準地との位置・地積・環境等の諸要因を比較し、その結果に基づいて公示価格と対象土地の価格との間に均衡を保たせることをいいます。一致させるのではありませんし、標準地は1つとは限りません。
Q8. 限定価格とは、市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提として求められる価格をいう。(○か×か)
答え: × それは特殊価格の説明です。限定価格は市場性を有する不動産について、併合や分割によって市場が相対的に限定される場合の価格で、借地権者が底地を併合する場合などが典型例です。
Q9. 証券化対象不動産について投資家に示すための投資採算価値を表す価格を求める場合、その価格は特定価格である。(○か×か)
答え: ○ 特定価格は、市場性を有する不動産について法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提条件を満たさない場合の価格です。資産の流動化(証券化)や民事再生法に基づく早期売却前提の評価がこれにあたります。
Q10. 原価法は、対象不動産が建物または建物およびその敷地である場合に適用される手法であり、対象不動産が土地のみである場合には適用することができない。(○か×か)
答え: × 対象不動産が土地のみであっても、再調達原価を適切に求めることができるとき(造成地・埋立地など)は適用できます。「できない」と範囲を狭める肢は疑ってください。
Q11. 取引事例比較法において、投機的取引であると認められる事例であっても、適切な事情補正を行えば取引事例として採用することができる。(○か×か)
答え: × 取引事例は取引事情が正常なもの、または正常なものに補正できるものでなければならず、投機的取引と認められる事例は採用できません。価格形成が歪みすぎていて補正できないためです。
Q12. 収益還元法は賃貸用不動産の価格を求める場合に用いる手法であるから、自用の住宅地に適用することはできない。(○か×か)
答え: × 自用の不動産であっても賃貸を想定することにより適用できます。基準は、市場性を有しない不動産以外のものには基本的にすべて収益還元法を適用すべきとしています。
まとめ
この章の得点源は、条文・基準の言葉づかいそのものです。次の表の左右の対応を、言葉のまま言えるようにしておけば1問取れます。
| 論点 | 覚える内容 | 典型的な誤り肢 |
|---|---|---|
| 手続の主語 | 土地鑑定委員会が選定・判定・公示。鑑定評価だけが2人以上の不動産鑑定士 | 「国土交通大臣が公示」「1人以上の鑑定士」 |
| 時期 | 基準日は1月1日、官報で公示(例年3月下旬) | 「毎年4月1日」「都道府県の公報で公示」 |
| 公示区域 | 都市計画区域その他の土地取引が相当程度見込まれる区域。規制区域は除く | 「都市計画区域内に限る」 |
| 公示事項 | 所在/単位面積当たりの価格と基準日/地積および形状/標準地およびその周辺の利用の現況 | 「前年からの変動率」「所有者の氏名」 |
| 正常な価格 | 定着物・使用収益を制限する権利が存しないものとして=更地価格 | 「建物が存する状態を前提として」 |
| 効力 | 一般の取引者=指標(努力義務)/鑑定士の正常価格・公共事業の取得価格・収用補償=規準(義務) | 指標と規準の入れ替え |
| 価格4種類 | 正常(通常の市場)/限定(併合・分割で市場が限定)/特定(証券化・民事再生等の法令の要請)/特殊(市場性なし・文化財) | 特定と特殊の入れ替え |
| 3手法 | 原価法=積算価格/取引事例比較法=比準価格/収益還元法=収益価格。原則併用し、試算価格の調整は単純平均ではない | 「土地に原価法は不可」「自用に収益還元法は不可」「1手法のみ適用」 |
ここまでで税・その他のうち法令系の2章が終わりました。次の第23章では、住宅金融支援機構・景品表示法・土地建物の知識・統計といった、5問免除科目にあたる分野をまとめて仕上げます。統計は最新の数値がそのまま問われる唯一の分野なので、試験直前に必ず読み返してください。