宅建士合格教科書|2026年度(令和8年度)
第 20 章|例年 2 問出題(区画整理 1 問+盛土規制法 1 問)

土地区画整理法・盛土規制法・その他の法令

換地のしくみを図で理解し、盛土の数字と「許可権者一覧」で締める

この章で学ぶこと

例年 2 問出題(土地区画整理法 1 問+盛土規制法 1 問)。どちらも出題パターンが固定された分野なので、2 問確保が目標です。

土地区画整理事業のしくみ — 減歩・換地・保留地

古い市街地は、道路が狭く土地の形も不揃いで、火事や災害に弱く土地の利用効率も上がりません。土地区画整理事業は、都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善と宅地の利用の増進を図るために行う、土地の区画形質の変更や公共施設の新設・変更に関する事業です(土地区画整理法2条)。一言でいえば「地区内の土地をいったん全部出してもらい、道路・公園を通して整形し直してから配り直す」事業です。

配り直しの際、各地権者は従前より少し狭い土地を受け取ります。この土地の減少を減歩(げんぶ)といい、減った分が道路・公園などの公共施設用地と、保留地になります。保留地とは、換地として誰にも割り当てずに残しておき、施行者が売却して事業費用に充てるための土地です。そして、従前の宅地の代わりに交付される整形後の宅地を換地といいます。換地は、従前の宅地と位置・地積・土質・水利・利用状況・環境などが照応するように定めなければなりません(照応の原則)。それでも生じる不均衡は、金銭=清算金の徴収・交付で調整します。

施行前 Aの宅地 500㎡ 不整形・道路が狭い 減歩して換地 施行後 Aへの換地 400㎡ 保留地 施行者が取得 道路(公共施設) 公園 500㎡ → 400㎡に減歩。減少分が道路・公園と保留地になる
図 20-1 減歩と換地の概念図。全員が少しずつ土地を出し合うことで、公共施設用地と保留地(売却して事業費に充当)を生み出します。土地は狭くなっても、整形され道路が通ることで宅地の価値は上がる——これが事業の成立原理です。
2026年法改正

この章の分野に2026年度(令和8年度)試験へ向けた制度改正はありません。ただし、刑法改正(2025年6月施行)で懲役・禁錮が拘禁刑に一本化されたため、罰則を含む肢は新用語で出題されます。盛土規制法の罰則は最も重い類型で3年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金(法人には最大3億円)と、法令上の制限の中でも突出して重い点も特徴として押さえてください。盛土規制法自体は2023年施行の新しい法律で、施行後毎年のように出題されている最ホットな分野です。

施行者と土地区画整理組合 — 「7人・3分の2・全員加入」

事業を行う主体=施行者には、民間施行(個人・土地区画整理組合・区画整理会社)と公的施行(都道府県・市町村、国土交通大臣、都市再生機構等)があります。両者は「どこで施行できるか」が異なります。民間施行は都市計画区域内であればどこでも(市街化調整区域でも、都市計画に定めがなくても)施行できるのに対し、公的施行は都市計画で定められた施行区域内で、市街地開発事業(都市計画事業)として施行しなければなりません。

施行者施行のための手続施行できる場所
個人(1人または数人共同)
土地区画整理組合
区画整理会社
都道府県知事の認可都市計画区域内ならどこでも可(施行区域の定めは不要・市街化調整区域でも可)
都道府県・市町村
国土交通大臣
都市再生機構等
都市計画事業(市街地開発事業)として施行都市計画で定められた施行区域内に限る

土地区画整理組合の設立

試験に出るのはほとんど組合施行です。組合を設立するには、施行地区となる区域内の宅地について所有権または借地権を有する者が7人以上共同して定款と事業計画を定め、都道府県知事の認可を受けます。このとき、区域内の宅地の所有者および借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意が必要です。裏を返せば、全員の同意は不要——ここが最頻出のひっかけです。

① 7人以上が共同 定款・事業計画を作成 ② 各2/3以上の同意 所有者・借地権者 ③ 知事の認可 国交大臣ではない ④ 組合成立 全員が組合員に
図 20-2 組合設立のフロー。「7人以上」「各3分の2以上」「知事の認可」の3点セットで覚えます。④で反対者も含めた全員が組合員になる点が次の論点です。

組合が成立すると、施行地区内の宅地の所有者・借地権者は、設立に同意しなかった者も含めて全員が当然に組合員になります。事業には地区内全員の協力が不可欠だからです。また、組合員から施行地区内の宅地の所有権・借地権を譲り受けた者は、組合員の地位も承継します。なお、未登記の借地権者は、書面で申告(届出)をしておかないと、借地権が存しないものとみなして手続が進められてしまいます。

項目内容
設立7人以上が共同・定款+事業計画・知事の認可
同意宅地の所有者・借地権者のそれぞれ3分の2以上(全員は不要)
組合員施行地区内の所有者・借地権者は全員強制加入(同意しなかった者も)。権利の承継人も組合員
賦課金組合員から徴収できる。滞納者には組合が督促し、なお納付がなければ市町村長に徴収を申請できる(市町村長が地方税の滞納処分の例により徴収)。組合員は組合への債権との相殺を主張できない
解散事業の完成・廃止などによる解散には知事の認可が必要

施行地区内の建築行為等の制限 — 許可権者に注意

事業が始まってから換地の配り直しが終わるまでの間に、地区内で勝手に建物を建てられると工事が進みません。そこで、事業の認可等の公告があった日から換地処分の公告がある日までの間、施行地区内で事業の施行の障害となるおそれのある次の行為をするには許可が必要です。

許可権者は都道府県知事等(市の区域内で個人施行者・組合・区画整理会社が施行する事業と、市が施行する事業ではその市の長)、国土交通大臣が施行する事業では国土交通大臣です。都市再生機構等が市の区域内で施行する場合まで市長になるわけではありません。組合施行の事業だからといって「組合の許可」を受けるのではありません。施行者の許可・市町村長の許可とするひっかけが頻出です。事業全体との調整が必要な判断なので、施行者自身ではなく監督者である知事等が判断する、と趣旨から覚えましょう。

仮換地 — 使うのは仮換地、売るのは従前の宅地

換地の配り直し(換地処分)は工事完了後ですが、工事の間も住民は生活しなければなりません。そこで施行者は、工事のため必要がある場合などに、換地処分に先立って仮換地を指定できます。「あなたの土地は工事するので、当面はこちらの土地を使ってください」という暫定の割当てです。指定にあたって必要な手続は施行者ごとに異なり、「同意」と「意見」の入れ替えが定番のひっかけです。

施行者仮換地の指定に必要な手続
個人施行者従前の宅地と仮換地となるべき宅地の権利者の同意
土地区画整理組合総会等の同意(総会・その部会・総代会)
区画整理会社施行地区内の所有権者・借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意
都道府県・市町村・国土交通大臣等土地区画整理審議会の意見を聴く(同意までは不要)

指定は、従前の宅地の所有者と仮換地となるべき宅地の所有者に対し、仮換地の位置・地積と指定の効力発生の日を通知して行います。指定の効果が本試験の核心です。従前の宅地の権利者は、効力発生日から換地処分の公告がある日まで、仮換地を従前の宅地と同じ内容で使用収益できるようになり、従前の宅地は使用収益できなくなります。しかし所有権はあくまで従前の宅地に残ったままです。したがって、売買や抵当権の設定といった処分は従前の宅地について行い、登記も従前の宅地に対して行います。仮換地を売ることはできません。

逆側からも見ておきます。ある土地がAの仮換地に指定されると、その土地をもともと使用収益できた者(元の所有者や借地人)は、その日から換地処分の公告の日まで、その土地を使用収益できなくなります。AとBが「使う場所」を交換しているのだと押さえれば、どちらの側から問われても答えられます。

A(権利者) 処分(売買・抵当権) 使用収益(住む・貸す) 従前の宅地 所有権はここに残る 売却・抵当権設定 ○ 使用収益 ×(使えない) 仮換地 使用収益 ○(住む・貸す) 売却などの処分 × 所有権はまだ移らない 元の権利者は使用収益できない 登記(所有権移転・抵当権設定)も従前の宅地に対して行う
図 20-3 仮換地指定の効果。「使う権利」だけが仮換地に引っ越し、「所有権(処分の対象)」は従前の宅地に残ります。問題文の行為が「使う話」か「売る話」かをまず判定しましょう。右下の1行は逆側の視点。仮換地に指定された土地の元の権利者は、その間その土地を使用収益できません。
暗記テク

仮換地は「携帯の代替機」。修理に出した自分の携帯(従前の宅地)の所有権は自分のままで、売るならこちらを売る。借りている代替機(仮換地)は使ってよいが、自分の物ではないので売れない——このイメージで一発です。

2つの補足論点も頻出です。第一に、仮換地に建物が残っているなど使用収益の障害があるときは、施行者は指定の効力発生日と別に使用収益を開始できる日を定めることができます。「効力発生の日から当然に使用できる」と言い切る肢は誤りです。第二に、仮換地の指定により生じた不均衡については、清算金を仮に徴収・交付する仮清算金の制度があります。

換地処分 — 「当日消える・翌日もらえる」

工事が終わると、いよいよ換地を確定させる換地処分です。その前提として施行者は換地計画を定めますが、施行者が個人施行者・組合・区画整理会社・市町村・機構等であるときは、換地計画について都道府県知事の認可を受けなければなりません(都道府県・国土交通大臣が施行者のときは認可不要)。

換地処分は、原則として換地計画に係る区域の全部について工事が完了した後、遅滞なく行いますが、規準・規約・定款・施行規程に別段の定めがあれば工事完了前でも行えます。「工事完了前はいかなる場合もできない」という肢は誤り——これも頻出です。方法は、施行者が関係権利者に換地計画で定められた事項を通知して行い、その後都道府県知事が換地処分があった旨を公告します(国土交通大臣が施行者のときは大臣自身が公告します。建築行為等の制限の許可権者と同じく、大臣施行だけが例外です)。

効果の発生タイミングは、この分野で最も出題される整理です。消える効果は公告の日の終了時(=当日)、新しく生じる効果は公告の日の翌日と、きれいに二分されます。

公告の日の終了時(当日)に消える ・仮換地指定の効果が終了 ・建築行為等の制限(76条)が終了 ・換地を定めなかった宅地の権利は消滅 遅滞なく(定款等に定めがあれば工事完了前も可) 工事完了 換地処分(通知) 知事の公告 公告の翌日 公告の日の翌日に生じる ・換地が従前の宅地とみなされる ・清算金が確定/・保留地は施行者が取得 ・新設の公共施設は原則市町村の管理 ・公共施設用地は原則その管理者に帰属
図 20-4 換地処分の時系列。「消えるのは当日・もらえるのは翌日」。本試験は「公告があった日から換地とみなされる」と当日にすり替えて出題します。
タイミング生じる効果
公告の日の終了時(当日)仮換地指定の効果の終了/建築行為等の制限の終了/換地計画で換地を定めなかった従前の宅地上の権利の消滅/行使する利益のなくなった地役権の消滅
公告の日の翌日換地が従前の宅地とみなされる/清算金の確定/保留地を施行者が取得/新設された公共施設は原則として市町村の管理/公共施設用地は原則その管理者に帰属
(例外)地役権行使する利益がある限り、換地処分の公告後も従前の宅地の上に存続する

保留地は例外なく施行者が取得します(組合施行なら組合)。一方、公共施設の管理は「原則市町村」であって、「すべて市町村」と言い切る肢は誤りです。登記については、施行者が換地処分の公告後遅滞なく地区内の土地・建物の変動について一括して登記を申請し、この登記がされるまでは、原則として他の登記はできません。

盛土規制法(1)— 2つの規制区域と許可の数字

盛土規制法(正式名: 宅地造成及び特定盛土等規制法)は、2021年の熱海市の土石流災害を契機に、旧・宅地造成等規制法を抜本改正して2023年に施行された法律です。旧法が守っていたのは市街地の宅地だけでしたが、熱海の崩落は市街地から離れた山あいの盛土が原因でした。そこで新法は、規制の網を2種類の区域でかけ直しました。危険な盛土は、宅地でも農地でも森林でも、全国どこでも規制できる——これが改正の核心です。

宅地造成等工事規制区域 市街地・集落とその周辺 工事は原則すべて許可制 知事等が指定 特定盛土等規制区域 市街地から離れた山側など 届出制+大規模は許可制 知事等が指定 2つの規制区域は絶対に重ならない 造成宅地防災区域=宅地造成等工事規制区域の「外」の、既に造成された宅地に指定 これから行う工事の規制ではなく、過去に造成された宅地のアフターケア
図 20-5 盛土規制法の区域マップ。3つの区域はすべて知事等(指定都市・中核市ではその長)が指定します。「重ならない」と言えるのは、特定盛土等規制区域も造成宅地防災区域も宅地造成等工事規制区域の外に指定される、というこの2組の関係だけです。「造成宅地防災区域を宅地造成等工事規制区域内に指定できる」は見た瞬間に×。

宅地造成等工事規制区域内の許可 — 最頻出の数値基準

宅地造成等工事規制区域は、宅地造成・特定盛土等・土石の堆積に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地・市街地となろうとする土地・集落とその周辺に指定されます。区域内で一定規模の宅地造成等に関する工事を行うには、工事主(注文者)が工事着手前に都道府県知事等の許可を受けなければなりません。許可が必要になる規模が、この法律の最頻出論点です。

工事の態様許可が必要になる規模
盛土高さ1m超の崖を生ずるもの
切土高さ2m超の崖を生ずるもの
盛土+切土(同時に行う)合わせて高さ2m超の崖を生ずるもの
崖が生じない盛土高さ2m超
上記のいずれにも当たらない盛土・切土面積500㎡超
① 盛土で高さ1m超の崖 盛土 1m超 ② 切土で高さ2m超の崖 切土前の地盤 2m超 ③ 盛土+切土で合計2m超の崖 元地盤 切土 盛土 合計2m超 ④ 崖が生じない盛土で高さ2m超 盛土 2m超 ⑤ どれにも当たらなくても、面積500㎡超なら許可が必要
図 20-6 許可が必要になる5パターンの断面イメージ。盛土だけ基準が1mと厳しいのは「盛った土は崩れやすい」から。数字は肢の中で相互に入れ替えて出題されます。③は元地盤を境に、削った深さと盛った高さを足して崖の高さを測る形。④は法面が30度以下で「崖」にならない代わりに、高さ2m超で許可が要るという意味です。
暗記テク

宅地造成等工事規制区域の許可基準は「盛1・切2・切盛2・盛2、広さは500」。土石の堆積(資材置場・残土の仮置き)も、高さ2m超または面積500㎡超なら許可の対象です。

許可を「受けたものとみなす」特例が2つ。①区域の指定後に都市計画法の開発許可を受けた工事(審査が重複するため)、②国・都道府県・指定都市・中核市の工事で知事との協議が成立したとき。いずれも「許可が不要」ではなく「許可があったものとみなす」という組み立てです。

許可後の手続も一連の流れで問われます。許可を受けた計画を変更するときは原則として変更の許可が必要で、軽微な変更なら遅滞なく届出で足ります(「軽微な変更を除き届出」と逆転させる肢に注意)。一定の工程では中間検査があり、工事完了後は知事等の完了検査を受けて検査済証の交付を受けます。

許可ではなく「届出」で足りる3つの場面

場面届出の期限
区域指定の際、既に工事中だった工事主指定があった日から21日以内(改めて許可を受ける必要はない)
高さ2m超の擁壁・崖面崩壊防止施設、または排水施設・地滑り抑止ぐい等の全部・一部の除却工事工事に着手する日の14日前まで
公共施設用地を宅地・農地等に転用した者転用した日から14日以内
① 指定の際に工事中 21日以内に届出(許可は不要) 指定の日 ② 擁壁等・排水施設等の除却 14日前までに届出 届出 工事着手 ③ 宅地・農地への転用 転用から14日以内に届出 転用の日
図 20-7 届出3点セット。②だけが「着手の前まで」で、①③は「事後」です。本試験は「前まで」と「以内」をひっくり返して出題します(もうやってた人だけ21、あとは14)。なお②の「高さ2m超」がかかるのは擁壁と崖面崩壊防止施設だけで、排水施設や地滑り抑止ぐい等には高さの要件がありません。

さらに、規制区域内の土地の所有者・管理者・占有者は、宅地造成等に伴う災害が生じないよう、その土地を常時安全な状態に維持するよう努める義務を負います。知事等は必要に応じて勧告や擁壁の設置などの改善命令を出せますが、その相手は工事をした本人に限られません。工事をしていない現在の所有者等にも命令できる——災害の危険は「誰が盛ったか」を問わないという、熱海の教訓を制度化したものです。

盛土規制法(2)— 特定盛土等規制区域と造成宅地防災区域

特定盛土等規制区域は、宅地造成等工事規制区域の外で、地形などからみて、盛土等が行われると離れた場所の人家等に危害を及ぼしうる区域(市街地から離れた山側など)に指定されます。人が住む場所そのものではないため、規制は宅造区域より一段緩い2段構えです。宅造区域なら許可となる規模の工事は着手の30日前までの届出で足り、より大規模なものだけが許可制になります。

工事の態様宅造区域: 許可
特定盛土区域: 30日前届出
特定盛土区域で許可が必要な規模
盛土の崖高さ1m超高さ2m超
切土の崖高さ2m超高さ5m超
盛土+切土の崖合計2m超合計5m超
崖が生じない盛土高さ2m超高さ5m超
面積500㎡超3,000㎡超
暗記テク

特定盛土等規制区域の許可ラインは、宅造区域の数字から「1が2に、2が5に、500が3,000」に格上げ、と変換して覚えます。届出の期限は「着手の30日前まで」——事後届出ではありません。なお、両規制区域の外では許可も届出も一切不要です(規制のない場所に手続はありません)。

造成宅地防災区域は、この2つの規制区域とはまったく性格が異なります。指定されるのは宅地造成等工事規制区域の外にある、既に造成された宅地のうち、相当数の居住者等に危害を生ずる災害のおそれが大きい一団の造成地です。これから行う工事を許可制で縛る制度ではなく、過去の造成地のアフターケアとして、所有者等に災害防止措置(擁壁の設置等)の努力義務を課し、知事等が勧告・改善命令を行うための区域です。問題文に「既に造成された宅地」とあれば造成宅地防災区域、「工事の許可」とあれば規制区域の話と見分けます。

その他の法令上の制限 — 「原則は知事、例外を覚える」

宅地建物の取引や利用を制限する法令は、この章までに扱ったもの以外にも数多くあります。近年の本試験では「その他の法令上の制限」が単独で1問出題されることはありませんが、許可権者の知識は重要事項説明(35条書面の「法令に基づく制限」)の前提にもなります。膨大な法令を全部覚えるのは不可能ですが、出題の型はただ1つ。「この区域内で工作物の新築や土地の形質変更をするには、誰の許可が必要か」です。そして原則は都道府県知事(または知事等)の許可。覚えるのは例外の許可権者だけです。

法令規制の場面(代表例)許可権者
道路法道路の区域・道路予定区域内の工作物の設置等道路管理者
河川法河川区域・河川保全区域内の工作物の新築、土地の掘削等河川管理者
海岸法海岸保全区域内の土石の採取、施設の新設等海岸管理者
港湾法港湾区域・港湾隣接地域内の一定の行為港湾管理者
生産緑地法生産緑地地区内の建築物の新築、宅地造成等市町村長
文化財保護法史跡名勝天然記念物の現状変更等文化庁長官
自然公園法国立公園の特別地域内の工作物の新築等環境大臣(国定公園は都道府県知事)
(原則どおりの例)森林法・地すべり等防止法・急傾斜地法保安林の立木の伐採/地すべり防止区域・急傾斜地崩壊危険区域内の一定の行為都道府県知事

覚え方は「管理者がいるものは管理者」(道路・河川・海岸・港湾)、「地元密着の生産緑地は市町村長」、「国の宝=文化財は文化庁長官」、「国立公園は国の機関=環境大臣、国定公園は知事」。ひっかけは常に「知事の許可」への言い換え(またはその逆)です。

ひっかけポイント

ここがひっかけ①: 許可権者・手続主体のすり替え

区画整理の建築行為等の制限は知事等の許可(国土交通大臣施行のみ大臣)であって、施行者(組合)や市町村長の許可ではありません。仮換地の指定手続も、組合施行=総会等の同意、都道府県・市町村施行=土地区画整理審議会の意見で、「同意」と「意見」が入れ替えて出題されます。

ここがひっかけ②: 換地処分の効果の「日付」

換地が従前の宅地とみなされ、保留地が施行者に帰属するのは公告の日の翌日です。「公告があった日から」と書かれた肢は×。逆に、仮換地指定の効果や建築制限が消えるのは公告の日の終了時(当日)。「消えるのは当日・もらえるのは翌日」で反射的に判定できるようにしましょう。

ここがひっかけ③: 盛土の数字クロスと「前まで/以内」

宅造区域の許可基準(盛1・切2・切盛2・盛2・500㎡)と特定盛土区域の許可基準(2・5・5・5・3,000㎡)を混ぜた肢が定番です。届出も、擁壁除却だけが「着手の14日前まで」の事前届出で、指定時工事中は「21日以内」・転用は「14日以内」の事後届出。方向(前か後か)を入れ替えて出題されます。

ここがひっかけ④: 造成宅地防災区域の指定場所

「造成宅地防災区域は、宅地造成等工事規制区域内の造成宅地について指定できる」——毎年のように見かける×肢です。防災区域は必ず宅地造成等工事規制区域の外。ただし「外」といえるのは宅造区域との関係だけで、特定盛土等規制区域と造成宅地防災区域の重複を禁じる規定はありません。「3つの区域はどれも重ならない」と丸ごと覚えると、そこを突いた肢で取りこぼします。

一問一答で総仕上げ

Q1. 土地区画整理組合を設立しようとする者は、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権または借地権を有するすべての者の同意を得なければならない。(○か×か)

答え: × 全員の同意は不要です。7人以上が共同して定款・事業計画を定め、宅地の所有者および借地権者のそれぞれ3分の2以上の同意を得て、都道府県知事の認可を受ければ設立できます。

Q2. 土地区画整理組合が成立した場合、施行地区内の宅地の所有者のうち設立に同意しなかった者も、すべて組合員となる。(○か×か)

答え: ○ 施行地区内の宅地の所有者・借地権者は、同意の有無にかかわらず全員が組合員になります。組合員から権利を承継した者も組合員です。

Q3. 土地区画整理組合施行の事業の施行地区内で、事業の施行の障害となるおそれのある建築物の新築をしようとする者は、当該組合の許可を受けなければならない。(○か×か)

答え: × 許可権者は施行者ではなく都道府県知事等です(国土交通大臣施行の事業のみ国土交通大臣)。事業の認可の公告から換地処分の公告まで、土地の形質変更・建築・重量5トン超の物件の設置堆積が許可制になります。

Q4. 仮換地の指定を受けた従前の宅地の所有者Aは、指定の効力発生後、その仮換地を第三者に売却することができる。(○か×か)

答え: × 仮換地についてAが持つのは使用収益権のみで、所有権は従前の宅地に残っています。売買や抵当権設定などの処分は従前の宅地について行います。

Q5. 施行者は、仮換地に使用収益の障害となる物件があるときは、仮換地指定の効力発生の日と別に、使用収益を開始することができる日を定めることができる。(○か×か)

答え: ○ 建物が残っている、造成が済んでいないなどの事情があるときは、効力発生日と使用収益開始日を分けて定めることができます。「効力発生の日から当然に使用できる」とする肢が×になります。

Q6. 換地処分は、換地計画に係る区域の全部について工事が完了する前は、いかなる場合もすることができない。(○か×か)

答え: × 原則は工事完了後遅滞なく行いますが、規準・規約・定款・施行規程に別段の定めがあれば工事完了前でも換地処分ができます。

Q7. 換地計画において定められた換地は、換地処分の公告があった日から、従前の宅地とみなされる。(○か×か)

答え: × 換地が従前の宅地とみなされるのは、公告があった日の翌日からです。公告の日(終了時)に生じるのは、仮換地指定の効果の終了や建築制限の終了など「消える」側の効果です。

Q8. 換地処分の公告があった場合、換地計画で定められた保留地は施行者が取得し、事業により新設された公共施設は原則として市町村の管理に属する。(○か×か)

答え: ○ いずれも公告の日の翌日に生じる効果です。保留地は例外なく施行者が取得し(組合施行なら組合)、公共施設の管理は「原則」市町村です(「すべて市町村」なら×)。

Q9. 宅地造成等工事規制区域内で、切土をする土地の面積が400㎡であり、高さ1.5mの崖を生ずる宅地造成工事を行う場合、都道府県知事の許可を受ける必要はない。(○か×か)

答え: ○ 切土は崖の高さ2m超で許可が必要ですが、1.5mはこれに満たず、面積も500㎡超に該当しません。盛土なら崖1m超で許可が必要になる点との対比に注意してください。

Q10. 宅地造成等工事規制区域の指定の際、既に宅地造成工事を行っている工事主は、指定があった日から21日以内に都道府県知事の許可を受けなければならない。(○か×か)

答え: × 指定の際に既に行われている工事については、指定日から21日以内の届出で足り、改めて許可を受ける必要はありません。「許可」と「届出」のすり替えです。

Q11. 造成宅地防災区域は、宅地造成に伴う災害で相当数の居住者等に危害を生ずるもののおそれが大きい一団の造成宅地であれば、宅地造成等工事規制区域内の土地についても指定することができる。(○か×か)

答え: × 造成宅地防災区域は、宅地造成等工事規制区域の外にある既に造成された宅地について指定されます。宅地造成等工事規制区域内の土地は条文で明文除外されているためです。

Q12. 自然公園法の国立公園の特別地域内において工作物を新築しようとする者は、原則として都道府県知事の許可を受けなければならない。(○か×か)

答え: × 国立公園の特別地域内の行為の許可権者は環境大臣です(国定公園なら都道府県知事)。「原則は知事・例外を覚える」の代表例です。

まとめ

これで第III部「法令上の制限」は完結です。次章からは第IV部に入り、不動産取得税・固定資産税など、2026年度の数値改正が目玉となる税の分野を攻略します。