この章で学ぶこと
- 借地借家法がどこに適用されるか — 建物所有目的の土地と、建物の賃貸借だけという線引き
- 借地権の存続期間「30 → 20 → 10」と、建物があるときだけ使える更新の仕組み
- 借地権の対抗力(自己名義の建物登記)と借家権の対抗力(引渡し)という 2 大頻出テーマ
- 定期借地権 3 類型と定期建物賃貸借 — 期間・用途・契約方式の数字を表で固める
- 建物買取請求権と造作買取請求権の違い、賃料の増額・減額しない特約の有効/無効
例年 2 問出題(借地 1 問+借家 1 問)。毎年必ず出る単元なので、2 問確保が目標です。
借地借家法の全体像 — 誰を、どこで守るのか
民法の賃貸借のルールをそのまま当てはめると、期間が満了すれば借主は出ていくしかありません。しかし住まいや店舗を失うことは生活や事業の基盤を失うことを意味します。そこで借主を手厚く保護するために民法の特別法として置かれたのが借地借家法です。特別法は一般法(民法)に優先しますから、借地借家法に規定がある事項はこちらが適用され、規定がない事項(敷金・修繕義務・原状回復など)は民法に戻ると考えてください。
ただし、すべての土地・建物の賃貸借に適用されるわけではありません。適用されるのは次の 2 つだけです。①建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権(これを借地権といいます)、②建物の賃貸借(借家)。土地を借りても資材置場や青空駐車場のように建物を建てない目的なら借地借家法は適用されず、民法だけで処理されます。また、賃料を払わない使用貸借(ただ貸し)は、そもそも賃貸借ではないので対象外です。
用語も先に固めます。土地の貸し借りでは、貸主を借地権設定者、借主を借地権者と呼びます。不動産を差し出す側が「設定者」である点は抵当権と同じ発想です。そして借地借家法の規定の多くは強行規定で、借主に不利な特約は無効、借主に有利な特約は有効です。判断に迷ったら「この特約は借主にとって得か損か」を考えれば、たいてい正解にたどり着けます。
2026年法改正 2026年度(令和8年度)試験に向けて、借地借家法そのものの改正はありません。契約や説明に電磁的記録・電磁的方法を使えるとした改正は既に施行済みで、本章の記述はすべて反映済みです。なお、同じ2026年4月1日施行の区分所有法の大改正には建替え決議等に伴って賃貸借を終了させる新制度が含まれるため、そちらは第16章で確認してください。
借地権の存続期間と更新
借地権の存続期間は30年です(借地借家法3条)。契約でこれより長く定めればその期間になりますが、短くはできません。ポイントは「短く定めたらどうなるか」で、契約が無効になるのではなく30年に引き延ばされます。期間をまったく定めなかった場合も30年です。つまり借地には「期間の定めのない契約」が存在しません。この点は、あとで見る借家(1年未満の定めは期間の定めがないものとみなされる)とちょうど逆向きなので、セットで覚えてください。
更新には 3 つの型があります。①当事者が合意する合意更新、②借地権者が更新を請求する更新請求、③期間満了後も借地権者が土地を使い続ける使用継続です。決定的に重要なのは、②③は土地の上に建物がある場合に限られるという点です。建物が朽ち果てたり取り壊されたりして更地になっていれば、借地権者は更新を主張できません。借地権はそもそも建物を守るための権利だからです。
②③の場合、借地権設定者が遅滞なく異議を述べれば更新を阻止できますが、その異議には正当事由が必要です(6条)。正当事由は、当事者双方が土地の使用を必要とする事情を主軸に、従前の経過・土地の利用状況・立退料などの財産上の給付の申出を総合考慮して判断されます。立退料はあくまで補完要素で、金さえ積めば正当事由になるわけではありません。実務上も正当事由は容易には認められない、という感覚を持っておけば十分です。
| 更新の型 | 建物の存在 | 設定者が拒むには |
|---|---|---|
| 合意更新 | 不要(更地でもよい) | 合意しなければよい |
| 更新請求 | 建物がある場合に限る | 遅滞なく異議+正当事由 |
| 使用継続 | 建物がある場合に限る | 遅滞なく異議+正当事由 |
暗記テク 「更新は建物がある人のご褒美」。更地なら請求更新も使用継続更新もできません。合意更新だけは当事者の自由なので建物の有無を問いません。
建物の再築・建物買取請求権・地代等増減額請求
借地上の建物が火事などで滅失したとき、借地権はどうなるでしょうか。当初の存続期間中であれば、借地権設定者は滅失を理由に解約を申し入れることはできず、借地権者は承諾なしに建て直すこともできます。さらに、残存期間を超えて存続する建物を建てることについて設定者の承諾があれば、借地権は承諾があった日か建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続します(7条)。これは更新ではなく期間の「延長」です。借地権者が再築の通知をし、設定者が2か月以内に異議を述べなければ承諾したものとみなされます。
ところが更新後の期間中は扱いが逆転します。承諾を得ずに残存期間を超えて存続する建物を建てると、設定者は解約の申入れ(地上権なら消滅請求)ができ、その日から3か月の経過で借地権は消滅します(8条)。長く借り続けている借地権者が、承諾もなく建物を新しくして半永久的に居座ることを防ぐ趣旨です。
期間が満了し、更新もされずに借地権が終了したとき、借地権者は借地権設定者に対して建物などを時価で買い取るよう請求できます(建物買取請求権・13条)。これは形成権で、請求した瞬間に時価による売買契約が成立し、設定者は「買いたくない」と拒めません。建物を壊させるのは社会的な損失であり、借地権者の投下資本も回収させるべきだからです。この権利を認めない特約は借地権者に不利なので無効です。
ただし借地権者の債務不履行(地代不払いなど)で契約が解除された場合には行使できません。これは判例が確立させたルールで、過去問で繰り返し狙われる最重要のひっかけです。契約を破った側まで手厚く保護する必要はない、というわけです。なお、借地上の建物を買い取った第三者が借地権の譲渡について設定者の承諾を得られなかった場合、その第三者も設定者に対して建物の買取りを請求できます(14条)。
地代が周辺相場と比べて不相当になったときは、当事者の一方から将来に向かって地代等増減額請求ができます(11条)。増額請求を受けた借地権者は、協議が調わなければ裁判が確定するまで自分が相当と認める額を払えば足り、確定後に不足があれば差額に年1割の利息を付けて支払います。減額請求の場合も鏡写しで、払いすぎた分は年1割の利息を付けて返還されます。特約の扱いは方向で結論が逆になるので、次の表で確定させてください。
| 特約の内容 | 借地(普通・定期とも)・普通借家 | 定期建物賃貸借 |
|---|---|---|
| 一定期間増額しない | 有効(借主に有利) | 有効 |
| 一定期間減額しない | 無効(借主に不利) | 有効 |
減額しない特約が有効になるのは定期建物賃貸借だけです。定期借地権にはこの例外がなく、11条は「契約の条件にかかわらず」増減額請求ができるとしているので、定期借地権でも地代を減額しない特約は無効です。「定期だから減額しない特約も有効」と一般化しないでください。
借地権の対抗力と、譲渡・転貸
借地権者Bが土地を借りている間に、借地権設定者Aがその土地を第三者Cに売ってしまったらどうなるでしょうか。Bが借地権をCに主張できなければ、Bは建物を壊して出ていくしかありません。そこで借地借家法10条は、借地上に借地権者が登記されている建物を所有していれば、借地権の登記がなくても第三者に対抗できるとしました。賃借権の登記には貸主の協力が必要で、現実にはまず行われないからです。
ここで押さえるべき点が 3 つあります。第一に、建物の登記は表示に関する登記(表題登記)でもかまいません。所有権保存登記まで必要とはされていません。第二に、登記は借地権者自身の名義でなければなりません。妻や子など家族名義の登記では対抗できないというのが判例で、これは定番のひっかけです。第三に、建物が滅失しても、建物を特定する事項・滅失の日・再築する旨を土地の見やすい場所に掲示すれば、滅失の日から2年間は対抗力が維持されます。ただし 2 年を過ぎてもなお対抗力を保つには、その 2 年内に建物を再築して登記する必要があります。
次に譲渡・転貸です。借地上の建物を第三者に売れば、敷地の利用権である借地権も一緒に移ります。借地権が賃借権なら民法612条により借地権設定者の承諾が必要で、無断譲渡・転貸は解除事由になります。ただし設定者に不利となるおそれがないのに承諾しない場合、裁判所は借地権者の申立てにより承諾に代わる許可を与えられます(19条)。建物が競売・公売で買い受けられた場合も同じ許可制度がありますが、こちらは申立人が借地権者ではなく買受人になります(20条)。競売は借地権者の意思と無関係に進むため、動くべきは新しく建物を手に入れた側だからです。
一方、借地権が地上権のときは話が変わります。地上権は物権なので、借地権者は設定者の承諾なしに自由に譲渡・転貸できます。また、借地上の建物を他人に「貸す」だけなら、それは建物賃貸借であって借地権の転貸ではないため、土地の設定者の承諾は不要です。
定期借地権等の 3 類型
更新があると土地が半永久的に戻ってこないため、地主は土地を貸し渋ります。そこで更新のない借地権を認めたのが定期借地権等の 3 類型です。講師が「時間がなくてもここだけは押さえろ」と言う最頻出パートで、期間・用途・契約方式の 3 点セットで問われます。
| 類型 | 存続期間 | 利用目的 | 契約の方式 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 一般定期借地権 | 50年以上 | 制限なし(居住用も可) | 書面または電磁的記録(公正証書でなくてよい) | 更新なし・再築による延長なし・建物買取請求なし の 3 特約をセットで定める |
| 事業用定期借地権 | 10年以上50年未満 | 専ら事業用の建物(居住用は不可) | 公正証書に限る | 賃貸マンション・社宅は「居住用」なので設定できない |
| 建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | 制限なし | 書面不要(口頭でも可) | 30年以上経過した日に建物を設定者へ相当の対価で譲渡する特約を付ける |
一般定期借地権の書面は種類を問いません。公正証書で作ってもよいのですが、「公正証書によらなければ無効」とする肢は誤りです。宅建試験で公正証書が必須なのは事業用定期借地権だけと覚えてください。居住用に転用されることを防ぐため、公証人のチェックを通させる趣旨です。
建物譲渡特約付借地権では、特約により借地権が消滅した後も、その建物に住み続けている借地権者や建物賃借人が請求すれば、原則として期間の定めのない建物賃貸借がされたものとみなされます(法定借家権)。土地は返っても、建物を使っている人はいきなり追い出されないという仕組みです。
暗記テク 「事業用は10・50・公正証書」。数字と方式をひと息で言えるようにしておくと、選択肢の 1 つは即断できます。
借家権の存続期間・更新・解約
ここからは建物の賃貸借(借家)です。一時使用のために建物を賃貸したことが明らかな場合には借家の規定は適用されませんが、居住用か事業用かは問いません。まず期間ですが、借地とは正反対で下限も上限もありません。民法604条の「上限50年」は建物賃貸借には適用されないため(29条2項)、100年の建物賃貸借も有効です。そして1年未満の期間を定めると、期間の定めがない建物賃貸借とみなされます(29条1項)。借地の「30年に引き上げ」との違いを意識してください。
期間の定めがある場合、当事者が期間満了の1年前から6か月前までの間に更新をしない旨の通知をしなければ、従前と同一の条件で更新したものとみなされます(26条)。通知をしても、期間満了後に賃借人が使用を続けているのに賃貸人が遅滞なく異議を述べなければ、やはり更新とみなされます。そして賃貸人からの更新拒絶には正当事由が必要です(28条)。ここでの最大のひっかけは、法定更新された後の期間で、従前と同一条件になるものの期間だけは「定めがないもの」になります。「同じ 3 年で更新される」という肢は誤りです。
期間の定めがない場合は、どちらからでもいつでも解約を申し入れられます。賃貸人からの申入れは正当事由が必要で、申入れの日から6か月の経過で終了します(27条)。賃借人からの申入れについて借地借家法に規定はないので民法に戻り、建物の賃貸借は3か月で終了します。この 6 か月と 3 か月の入替えは頻出です。
| 場面 | 賃貸人から | 賃借人から |
|---|---|---|
| 期間の定めあり/更新拒絶 | 1年前〜6か月前に通知+正当事由 | 1年前〜6か月前に通知(正当事由は不要) |
| 期間の定めなし/解約申入れ | 正当事由+申入れから6か月 | 申入れから3か月 |
| 1年未満の期間を定めた | 期間の定めがないものとみなす(定期建物賃貸借を除く) | |
借家権の対抗力・造作買取請求権・関係者の保護
建物の賃借人は、賃借権の登記がなくても建物の引渡しを受けていれば、その後に建物を取得した者に賃借権を対抗できます(31条)。借地の「自己名義の建物登記」と並ぶ最頻出テーマで、対抗要件の 3 点セット(民法の賃借権=登記/借地=自己名義の建物登記/借家=引渡し)として横断で問われます。鍵を受け取って住み始めていれば、大家が建物を売っても新しい所有者に「ここは私が借りている」と言えるわけです。
賃借人が賃貸人の同意を得てエアコンや建具などの造作を付加した場合、賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときに、その造作を時価で買い取るよう請求できます(造作買取請求権・33条)。ここで最大の注意点は、この権利を排除する特約が有効であることです。借主に不利な特約は無効という原則の例外にあたります。理由は、買取義務を恐れた賃貸人が造作の設置そのものに同意しなくなるのを防ぐため、つまり長い目で見れば賃借人の利益になるからです。転借人にも同様に認められますが、債務不履行解除の場合は行使できません。建物買取請求権と混同しやすいので、次の表で違いを固定してください。
| 比較項目 | 建物買取請求権(借地) | 造作買取請求権(借家) |
|---|---|---|
| 対象 | 借地上の建物など | 賃貸人の同意を得て付加した造作 |
| 行使できる場面 | 期間満了で更新がないとき | 期間の満了・解約の申入れによる終了 |
| 債務不履行解除のとき | 行使できない | 行使できない |
| 排除する特約 | 無効(強行規定) | 有効(任意規定) |
| 買取価格 | 時価 | 時価 |
周辺の保護規定も 3 つ押さえます。第一に、適法な転貸借がある場合、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときは、賃貸人は転借人に通知しなければその終了を転借人に対抗できず、通知の日から6か月の経過で転貸借が終了します(34条)。通知が必要なのはこの 2 つの終了原因のときだけです。第14章で見たとおり、合意解除は通知の有無にかかわらずそもそも転借人に対抗できず、賃借人の債務不履行による解除は通知も催告もなしに転借人に対抗できます。「Bの賃料不払いでAが解除したが、Cに通知していないので対抗できない」という肢は誤りです。第二に、借地上の建物を借りている人が、借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合、裁判所は建物賃借人の請求により、知った日から1年を超えない範囲で明渡しの期限を許与できます(35条)。第三に、居住用建物の賃借人が相続人なしに死亡したとき、内縁の配偶者など事実上夫婦・養親子と同様の関係にあった同居者が賃借人の権利義務を承継します(36条)。承継したくなければ、死亡を知った後1か月以内に賃貸人へ反対の意思を表示します。
定期建物賃貸借と取壊し予定建物の賃貸借
更新のない建物賃貸借が定期建物賃貸借です(38条)。普通借家では認められない扱いがいくつも並ぶため、対比で狙われます。
要件を順に確認します。契約は書面または電磁的記録で行い、期間を定める必要があります。定期建物賃貸借では29条1項が適用されないため、1年未満の期間も有効です(ウィークリーマンションを思い浮かべてください)。賃貸人はあらかじめ、賃借人に対し「この契約は更新がなく期間満了で終了する」旨を記載した書面を交付して説明しなければならず、この書面は契約書とは別個独立の書面である必要があります(判例)。賃借人の承諾があれば、この書面の交付に代えて電磁的方法で提供することもできます。説明を怠ると、更新がない旨の定めが無効になり、普通の建物賃貸借になってしまいます。
期間が1年以上の場合、賃貸人は期間満了の1年前から6か月前までに終了する旨を通知しなければ、終了を賃借人に対抗できません。ただし通知が遅れても、通知の日から6か月を経過すれば対抗できるようになります。普通借家との決定的な違いは、この終了に正当事由が不要であることです。また、居住用の建物で床面積200㎡未満のものについて、転勤・療養・親族の介護その他やむを得ない事情により生活の本拠として使うことが困難になったときは、賃借人から解約を申し入れることができ、申入れの日から1か月で終了します。特約がなくても行使でき、賃貸人からは使えません。さらに、賃料改定の特約があるときは32条が適用されないため、減額しない特約も有効になります。
もう 1 つ、法令や契約により一定期間経過後に取り壊すことが明らかな建物(借地権の存続期間満了後に取り壊す建物など)については、建物を取り壊すこととなる時に賃貸借が終了する旨を定められます(39条・取壊し予定の建物の賃貸借)。この特約は取り壊すべき事由を記載した書面または電磁的記録によることだけ押さえれば十分です。
| 制度 | 必要な方式 | 電磁的記録での代替 |
|---|---|---|
| 普通借地権・普通借家 | 方式は自由(口頭でも成立) | — |
| 一般定期借地権 | 書面(公正証書でなくてよい) | 可 |
| 事業用定期借地権 | 公正証書に限る | 不可 |
| 建物譲渡特約付借地権 | 方式は自由(口頭でも可) | — |
| 定期建物賃貸借(契約) | 書面 | 可 |
| 定期建物賃貸借(事前説明) | 契約書とは別個の書面を交付 | 可(賃借人の承諾が必要) |
| 取壊し予定建物の賃貸借 | 取り壊すべき事由を記載した書面 | 可 |
ひっかけポイント
ここがひっかけ 「短い期間を定めたとき」の結論が借地と借家で逆です。借地で20年と定めれば30年に引き上げられますが、借家で6か月と定めれば期間の定めがないものとみなされます。「借家で6か月と定めたので1年になる」という肢は誤りです。1年に引き上げる制度はどこにもありません。
ここがひっかけ 買取請求権を排除する特約の有効・無効が入れ替えられます。借地の建物買取請求権を排除する特約は無効(ただし定期借地権では排除可)、借家の造作買取請求権を排除する特約は有効です。「借主に不利だから無効」という直感で造作の方を切ると外します。なお、どちらも債務不履行解除では行使できない点は共通です。
ここがひっかけ 公正証書が必要なのは事業用定期借地権だけです。「一般定期借地権は公正証書によらなければならない」「定期建物賃貸借は公正証書で締結する必要がある」はいずれも誤りで、書面(または電磁的記録)であれば足ります。逆に「事業用定期借地権は公正証書以外の書面によっても設定することができる」という肢は誤りです。公正証書も書面の一種ですから、「書面」という語を見ただけで反射的に×を付けてはいけません。
ここがひっかけ 誰が申し立てるか・誰が請求できるかが入れ替えられます。借地権の譲渡に承諾が得られないときの裁判所への申立ては借地権者が行いますが、建物を競売で取得した場合は買受人が申し立てます。定期建物賃貸借の中途解約も賃借人からのみで、賃貸人からは申し入れられません。
一問一答で総仕上げ
Q1. 建物の所有を目的として存続期間を20年と定めた土地の賃貸借契約は、期間の定めが無効となり、存続期間は30年となる。(○か×か)
答え: ○ 借地権の存続期間は30年で、これより短い定めは借地権者に不利なため無効となり、30年に引き上げられます。期間をまったく定めなかった場合も30年です。
Q2. 資材置場として使用する目的で土地を賃借した場合にも借地借家法が適用され、存続期間は30年となる。(○か×か)
答え: × 借地借家法の借地権は建物の所有を目的とするものに限られます。資材置場や青空駐車場は建物を建てないので適用されず、民法の賃貸借(上限50年)で処理されます。
Q3. 借地権者Bが借地上の建物を配偶者名義で登記している場合でも、Bは土地を買い受けた第三者Cに借地権を対抗することができる。(○か×か)
答え: × 対抗力が認められるのは借地権者自身の名義で登記された建物を所有する場合です。配偶者や子など家族名義の登記では対抗できない、というのが判例です。なお表示に関する登記でよい点は正しい知識です。
Q4. 借地上の建物が滅失した場合、借地権者が建物を特定する事項・滅失日・再築する旨を土地上の見やすい場所に掲示すれば、滅失の日から2年間は借地権を第三者に対抗できる。(○か×か)
答え: ○ 掲示による対抗力は滅失の日から2年間の応急措置です。2年を過ぎても対抗力を保つには、その2年内に建物を再築して登記する必要があります。
Q5. 借地権者の地代不払いを理由に借地契約が解除された場合であっても、借地権者は借地権設定者に対し建物を時価で買い取るよう請求できる。(○か×か)
答え: × 建物買取請求権は「期間が満了し更新がないとき」に行使できるもので、借地権者の債務不履行による解除の場合には行使できません(判例)。契約を破った側まで保護する必要はないためです。
Q6. 存続期間を50年として事業用の店舗の所有を目的とする借地権を設定する場合、公正証書によれば事業用定期借地権として設定することができる。(○か×か)
答え: × 事業用定期借地権の存続期間は10年以上50年未満で、50年ちょうどは範囲外です。この場合は50年以上を要件とする一般定期借地権を、書面または電磁的記録で設定することになります。
Q7. 存続期間を50年とする一般定期借地権の設定契約は、公正証書によってしなければ効力を生じない。(○か×か)
答え: × 一般定期借地権の特約は書面または電磁的記録によればよく、公正証書に限られません。宅建試験で公正証書が必須なのは事業用定期借地権だけです。
Q8. 建物の賃貸借において期間を6か月と定めた場合、その定めは無効となり、存続期間は1年となる。(○か×か)
答え: × 1年未満の期間を定めた建物賃貸借は期間の定めがないものとみなされます(29条1項)。「1年に引き上げる」制度はありません。ただし定期建物賃貸借では1年未満の期間も有効です。
Q9. 期間の定めのない建物賃貸借において賃借人が解約を申し入れた場合、賃貸借は申入れの日から6か月を経過することによって終了する。(○か×か)
答え: × 賃借人からの解約申入れは民法により3か月で終了します。6か月+正当事由が必要なのは賃貸人からの申入れです。
Q10. 期間3年の建物賃貸借について賃貸人が更新拒絶の通知をしなかった場合、契約は従前と同一の条件で更新され、その期間も3年となる。(○か×か)
答え: × 法定更新では従前と同一の条件で更新されますが、期間だけは定めがないものとなります(26条1項ただし書)。「同じ3年で更新」は定番のひっかけです。
Q11. 建物の賃貸人の同意を得て賃借人が付加した造作について、造作買取請求権を行使できない旨の特約は、賃借人に不利であるから無効である。(○か×か)
答え: × 造作買取請求権の規定は強行規定に含まれておらず、排除する特約は有効です。買取義務を恐れて賃貸人が造作の設置に同意しなくなるのを防ぐ、という趣旨で例外扱いになっています。
Q12. 定期建物賃貸借において、一定期間賃料を減額しない旨の特約を定めても、賃借人に不利であるから無効である。(○か×か)
答え: × 定期建物賃貸借で賃料改定の特約があるときは借賃増減請求の規定が適用されないため、減額しない特約も有効です。普通借家では無効になるので、両者の対比で押さえてください。
まとめ
最後に、民法の賃貸借・借地・借家を 1 枚で横断整理します。この表の数字が口をついて出るようになれば、本試験の 2 問は安定して取れます。
| 比較項目 | 民法の賃貸借 | 借地(借地権) | 借家(建物賃貸借) |
|---|---|---|---|
| 存続期間 | 上限50年(超えれば50年に短縮) | 30年以上(短い定め・定めなしは30年) | 上限なし(1年未満は期間の定めなし) |
| 更新後の期間 | 上限50年 | 1回目20年/2回目以降10年 | 期間の定めがないものになる |
| 対抗要件 | 賃借権の登記 | 自己名義の建物の登記(表示登記可) | 建物の引渡し |
| 解約申入れ後の終了 | 土地1年/建物3か月 | 更新後の無断再築などで3か月 | 賃貸人6か月+正当事由/賃借人3か月 |
| 買取請求 | なし | 建物買取請求権(排除特約は無効) | 造作買取請求権(排除特約は有効) |
| 更新のない類型 | — | 一般定期50年/事業用10〜50年未満/建物譲渡30年 | 定期建物賃貸借(1年未満も可) |
覚え方の芯は 3 つです。①数字は借地が「30 → 20 → 10」、借家が「1年前〜6か月前・6か月・3か月」。②対抗要件は「借地=自己名義の建物登記、借家=引渡し」。③方式は「公正証書は事業用定期借地権だけ」。あとは増減額の特約や買取請求権の排除特約のように「借主に有利か不利か」で決まる論点をこの 3 本にぶら下げれば、初見の肢でも判断できます。
次章では、1 棟の建物を多数の人で所有する区分所有法と相続を扱います。区分所有法は2026年4月1日施行の大改正が入っており、決議要件の数字が大きく変わっている最重要の改正論点です。