宅建士合格教科書|2026年度(令和8年度)
第 12 章|例年 1〜2 問出題

抵当権と担保物権

競売の優先弁済をめぐる攻防。法定地上権と物上代位を図で制す

この章で学ぶこと

例年 1〜2 問出題。抵当権は権利関係の常連です。図の型を覚えて 1 問を確実に取ることが目標です。

担保物権の全体像 — なぜ担保を取るのか

お金を貸した債権者Bにとって、債務者Aが返してくれない事態が最大のリスクです。そこでAの財産をあらかじめ「押さえて」おき、返済がなければその財産から他の債権者より優先して回収する仕組みが担保物権です。当事者の合意(契約)で設定するものを約定担保物権(質権・抵当権)、一定の要件を満たすと法律上当然に発生するものを法定担保物権(留置権・先取特権)といいます。

担保物権には共通する 4 つの性質(通有性)があります。①付従性(被担保債権が消えれば担保物権も消える)、②随伴性(被担保債権が譲渡されれば担保物権も付いていく)、③不可分性(債権全部の弁済を受けるまで目的物の全部に効力が及ぶ)、④物上代位性(目的物が売却・滅失等で金銭債権に姿を変えたら、その金銭債権に効力が及ぶ)です。ただし留置権にだけは物上代位性がありません。留置権はそもそも優先弁済権(競売代金から優先的に回収する力)を持たない権利なので、「変わり身」から回収する力もないのです。

担保物権種別付従性随伴性不可分性物上代位性
留置権法定○○○×
先取特権法定○○○○
質権約定○○○○
抵当権約定○○○○

暗記テク 通有性の表は「留置権だけ物上代位×」の 1 点を覚えれば足ります。理由とセットで —「優先弁済権のない留置権には、代わり物から取る力もない」。

抵当権の設定と効力の及ぶ範囲

抵当権は、債務者または第三者が目的物の占有を手放さずに担保に差し出す約定担保物権です(民法369条)。Aは抵当権を設定した後も土地を使い続け、収益を上げながら返済できます。ここが「質入れ」との決定的な違いで、非占有担保と呼ばれます。設定契約は合意だけで成立し(諾成契約)、登記は第三者への対抗要件です。

B(債権者) =抵当権者 A(債務者) =抵当権設定者 ①融資 3,000万円 ②土地に抵当権を設定(登記) 甲土地(時価3,000万円) Aが使用継続できる 所有 ③不履行なら競売 → 優先弁済
図 12-1 抵当権の基本関係。設定後もAは土地を占有・使用したまま(非占有担保)で、Bは不履行時に初めて競売を申し立てて配当を受けます。破線が「いざというとき」の動きです。

設定に関する試験の急所は次の 3 点です。第一に、抵当権を設定できる目的物は不動産(土地・建物)のほか、地上権と永小作権です。賃借権には設定できません。第二に、抵当権設定者は債務者本人に限らず、第三者(物上保証人)でもかまいません。第三に、被担保債権は金銭債権に限らず、将来発生する債権のためにも設定できます(付従性の緩和)。

次に、設定した抵当権が「どこまで」に及ぶかです。土地と建物は別個の不動産なので、土地への抵当権は建物に及ばず、建物への抵当権は土地に及びません。一方、目的物と一体化・従属しているものには及びます。

対象効力ポイント
付合物(増築部分・立木・雨戸など)及ぶ設定の前後を問わない
従物(庭石・畳・給油所の地下タンクや洗車機など)及ぶ設定当時に存在した従物(判例)
従たる権利(借地上の建物に設定 → 敷地の賃借権)及ぶ建物の価値を支える権利ごと担保になる
果実(賃料など)原則及ばない被担保債権の不履行後に生じたものには及ぶ
別個の不動産(土地 ⇔ 建物)及ばない土地と建物は常に別の不動産

優先弁済を受けられる範囲にも制限があります。元本は全額優先弁済を受けられますが、利息・定期金は「満期となった最後の 2 年分」だけです(民法375条)。これは後順位抵当権者や一般債権者に「先順位者が持っていく最大額」を予測させるための制限です。だから制限が働くのは他の債権者との関係だけで、債務者や設定者に対しては 2 年分に限らず全額を請求できます。

物上代位 — 払渡し前の差押えがすべて

抵当建物が火事で焼失すると、抵当権は目的物を失います。しかしAが火災保険を掛けていれば、建物の価値は火災保険金請求権に姿を変えて残っています。この「変わり身」に抵当権の効力を及ぼして優先弁済を受けるのが物上代位です(民法372条・304条)。対象は保険金・売買代金・賃料などの金銭債権です。

①建物が焼失 (目的物の滅失) ②火災保険金請求権 =価値の変形物 ③払渡し前に差押え → 優先弁済を受ける 価値が変形 効力が及ぶ 対象: 売買代金・賃料・保険金(いずれも払渡し前に差押え)
図 12-2 物上代位の 3 ステップ。金銭がAに払い渡されてしまうとAの他の財産と混ざって特定できなくなるため、抵当権者は「払渡し前」に自ら差し押さえなければなりません。

要件はただ 1 つ、払渡しまたは引渡しの前に抵当権者自身が差し押さえることです。保険金がすでにAへ支払われてしまえば、その金銭はAの一般財産に混ざり、もはや物上代位はできません。「差押えのタイミング」を後ろにずらした誤り肢が定番です。なお、抵当不動産が賃貸されている場合の賃料債権にも物上代位できます(被担保債権の不履行後)。

抵当権と賃借権 — 登記の前後で運命が分かれる

抵当権が実行されると目的物は競売され、買受人が新所有者になります。このとき賃借人が退去を迫られるかどうかは、賃借権の対抗要件と抵当権設定登記のどちらが先かで決まります。

①登記前からの賃借人 買受人に対抗できる ○ ②登記後の賃借人 対抗できない ×(建物なら明渡し猶予 6ヶ月) 時間 抵当権設定登記 競売・買受け 6ヶ月の明渡し猶予 (賃料相当額を支払う)
図 12-3 賃借権の運命は抵当権設定登記との先後で決まります。登記後の建物賃借人は追い出される立場ですが、引っ越し準備のために買受けの時から 6 ヶ月だけ明渡しが猶予されます。

原則を整理します。抵当権設定登記より前に対抗要件(賃借権の登記、建物なら引渡し、借地なら借地上の自己名義の建物の登記)を備えた賃借人は、競売の買受人に賃借権を対抗でき、住み続けられます。登記より後の賃借人は対抗できず、買受人に明け渡さなければなりません。

ただし、登記後の建物賃借人には救済があります。競売手続の開始前から使用収益していた者は、買受人の買受けの時から 6 ヶ月間、明渡しが猶予されます(民法395条)。これはあくまで「引っ越しの猶予」であって賃借権が続くわけではなく、買受人に賃料相当額を支払う必要があります(1 ヶ月分以上の支払いを相当期間を定めて催告されたのに応じなければ猶予は失われます)。また、登記をした賃貸借は、その登記前に登記したすべての抵当権者が同意し、その同意の登記があるときは、例外的に抵当権者・買受人に対抗できます(民法387条)。

法定地上権と一括競売

日本では土地と建物が別個の不動産なので、競売によって「土地はC、建物はA」のように所有者が分かれることが起こります。このとき建物に敷地利用権が何もないと、建物は不法占拠となり取壊しを迫られ、社会経済上の損失が生じます。そこで法律が自動的に地上権を発生させるのが法定地上権です(民法388条)。成立要件は次の 4 つです。

  1. 抵当権設定当時、土地の上に建物が存在すること
  2. 抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一であること
  3. 土地・建物の一方または双方に抵当権が設定されたこと
  4. 競売により土地と建物の所有者が別々になったこと
【成立】設定当時から建物あり 建物(A所有) 土地(A所有・抵当権) 競売でCが取得 法定地上権が成立する (建物は存続できる) 【不成立】設定当時は更地 建物(あとで築造) 土地(A所有・抵当権) 競売でCが取得 法定地上権は不成立 (一括競売はできる)
図 12-4 判定の分かれ目は「抵当権設定当時」の状態です。抵当権者は設定時の担保価値を基準に融資しているため、更地として高く評価した土地に後から建物が建っても、建物を守る地上権は発生させません。

なぜ「設定当時」で判定するのか。抵当権者は設定時の状態を見て担保価値を評価するからです。更地は利用制限のない土地として高く評価されるので、後から建物が建ったからといって法定地上権を成立させると、抵当権者の期待(更地価格での回収)を裏切ることになります。この趣旨から頻出パターンの正誤が導けます。

設定当時の状況法定地上権理由
土地・建物とも同一所有者。土地(または建物・双方)に抵当権成立4 要件を満たす
更地に抵当権 → その後建物を築造不成立設定当時に建物なし(更地評価を守る)
設定当時、土地と建物の所有者が別人不成立もともと約定の敷地利用権があるはず
1 番抵当権の設定当時は更地、2 番設定当時は建物あり不成立1 番抵当権者の更地評価を基準にする(判例)
設定当時に建物あり(未登記でも)・同一所有者成立建物の登記の有無は要件でない(判例)

更地に抵当権を設定した後に建物が築造された場合、抵当権者は土地とともに建物も競売できます(一括競売、民法389条)。建物ごと売った方が買い手が付きやすいからです。ただし抵当権はあくまで土地だけのものなので、優先弁済を受けられるのは土地の代金からのみです。

第三取得者の保護と抵当権の処分・消滅

代価弁済と抵当権消滅請求

抵当権付きの不動産を買ったC(第三取得者)は、いつ競売されるか分からない不安定な立場です。そこで民法はCのために抵当権を消す手段を 2 つ用意しています。①代価弁済(民法378条)は、抵当権者の請求に応じてCが売買代価を抵当権者に支払うと抵当権が消滅する制度、②抵当権消滅請求(民法379条以下)は、Cの側から「この金額で消してほしい」と申し出る制度です。消滅請求は債権額より少ない金額でもよいのがポイントで、「少ないお金で抵当権消して」と覚えます。

C(第三取得者) 抵当付き不動産の買主 登記した債権者B (抵当権者) ①金額を記載した書面を送付 2ヶ月経過 ②競売の申立てをしない → 承諾みなし ③Cが提示額を支払う → 抵当権は消滅 承諾の効果 ※主債務者・保証人とその承継人は請求できない
図 12-5 抵当権消滅請求の流れ。提示額に不満な債権者は 2 ヶ月以内に競売を申し立てて対抗します。何もしなければ「その金額でよい」と承諾したものとみなされます。

最頻出のひっかけは「誰が請求できないか」です。主たる債務者・保証人(連帯保証人を含む)およびその承継人は、抵当不動産を買い受けても消滅請求できません。彼らはもともと債務の全額を弁済すべき立場であり、少ない金額で抵当権を外すことを認める理由がないからです。請求の時期は、抵当権の実行としての競売による差押えの効力発生前までです。

項目代価弁済抵当権消滅請求
主導権抵当権者の請求に応じて第三取得者から申し出る
支払う額売買の代価自ら提示した金額(債権額未満でも可)
手続抵当権者へ代価を弁済登記した各債権者へ書面を送付
債権者の対抗手段—(請求するかは自由)2 ヶ月以内の競売申立て
請求できない者—主債務者・保証人・その承継人

抵当権の順位と処分

同じ不動産に複数の抵当権を設定でき、優先順位は登記の前後で決まります。順位は各抵当権者の合意で変更できますが、利害関係者の承諾が必要で、順位変更の登記をしなければ効力を生じません(登記が効力要件。対抗要件ではない点に注意)。

また、先順位者は自分の優先枠を特定の後順位者に融通できます(抵当権の処分)。順位の譲渡は「自分の枠から相手に先に取らせる」、順位の放棄は「相手と同順位になって債権額に応じて按分する」処分です。競売代金 6,000 万円、1 番A(債権 3,000 万円)・2 番B(債権 2,000 万円)・3 番C(債権 2,000 万円)で計算してみます。

  1. 処分がなければ配当は順位どおり、A 3,000 万円・B 2,000 万円・C 1,000 万円(Cは一部しか回収できない)
  2. AがCに順位を譲渡: AとCの配当合計 4,000 万円をまずCに配る → C 2,000 万円(全額)、残り 2,000 万円がA。Bは 2,000 万円のまま影響なし
  3. AがCに順位を放棄: 合計 4,000 万円を債権額の比 3,000 : 2,000(= 3 : 2)で按分 → A 2,400 万円、C 1,600 万円。Bはやはり影響なし

処分の当事者(AとC)の取り分の合計は変わらず、関係のない中間者Bの配当は一切変動しない — これが計算問題の検算ポイントです。

抵当権の消滅

被担保債権が弁済や時効で消滅すれば、付従性により抵当権も消滅します。抵当権自体の消滅時効については、債務者・抵当権設定者との関係では、被担保債権と同時でなければ時効消滅しません(民法396条)。借金を残したまま抵当権だけ時効で消えるのを防ぐ趣旨です。これに対し第三取得者・後順位抵当権者との関係では、被担保債権と離れて 20 年の消滅時効にかかります(判例)。また、債務者・設定者以外の者が抵当不動産を取得時効に必要な要件で占有すれば、抵当権はこれによって消滅します(民法397条)。

なお、同一の債権を担保するため複数の不動産に抵当権を設定することもできます(共同抵当)。全部を同時に競売して配当する場合は、各不動産の価額に応じて被担保債権の負担が割り付けられます。一方の不動産だけが先に競売された場合(異時配当)、抵当権者はその代価から債権の全額について弁済を受けられますが、そのあおりを受けた後順位抵当権者は、同時配当なら先順位者が他方の不動産から受けるはずだった額を限度に、先順位抵当権者に代位して他方の不動産の抵当権を行使できます(民法392条2項)。基礎知識として押さえておけば十分です。

根抵当権とその他の担保物権

根抵当権 — 「枠」で担保する

継続的に取引する銀行と事業者の間では、貸付けと返済が何度も繰り返されます。そのたびに抵当権を設定・抹消するのは非効率なので、極度額という「枠」を決めて、その枠内で増減する不特定の債権をまとめて担保するのが根抵当権です(民法398条の2以下)。

確定前: 極度額1,000万円の枠 貸付① 300万円 → 弁済で消滅 貸付② 500万円 貸付③ 200万円(新たな貸付) 元本確定 確定後 確定時に存在する債権のみ担保 以後の新規貸付は担保されない 随伴性が復活(普通抵当と同様) 確定前は随伴性なし: 被担保債権を譲渡しても根抵当権は移転しない
図 12-6 根抵当権は個々の債権ではなく「枠」に付いています。だから確定前は個別の債権が消えても弁済で消滅せず(付従性の緩和)、債権を譲り受けた者も根抵当権を取得しません(随伴性なし)。

試験の急所は普通の抵当権との違いです。①被担保債権は一定の範囲に属する不特定の債権に限られ、「あらゆる債権を担保する」包括根抵当は禁止です。②元本確定前は付従性・随伴性がありません。個々の債権が弁済されても根抵当権は消えず、確定前に被担保債権を譲り受けた者は根抵当権を行使できません。③優先弁済は元本・利息とも極度額まで受けられ、利息の「最後の 2 年分」制限はありません。④確定前であれば、被担保債権の範囲や債務者の変更は後順位抵当権者等の承諾なしにできます(極度額の変更だけは利害関係者の承諾が必要)。

元本の確定期日は定めても定めなくてもよく、定める場合は 5 年以内です。定めがないときは、設定者は設定の時から 3 年を経過すれば確定請求でき(請求から 2 週間で確定)、根抵当権者はいつでも確定請求できます(請求の時に確定)。

確定期日の到来と確定請求のほかに、法律上当然に元本が確定する事由もあります(民法398条の20)。いずれも「もうこれ以上は取引を続けられない」事態が起きた場面だと考えると覚えやすくなります。

項目普通抵当権根抵当権(確定前)
被担保債権特定の債権一定の範囲に属する不特定の債権
付従性あり(弁済で消滅)なし(個々の弁済では消えない)
随伴性ありなし
利息の優先弁済満期のきた最後の 2 年分極度額まで制限なし

留置権・先取特権・質権の要点

残る 3 つの担保物権は、それぞれ 1 つの急所に絞って押さえます。留置権は「その物に関して生じた債権」を持つ占有者が、弁済を受けるまで物を留め置ける法定担保物権です(債権が弁済期にあること、占有が不法行為によって始まったものでないことも必要です)。優先弁済権はありませんが、競売の買受人にも「払うまで渡さない」と主張できるため、事実上弁済を強制できます。占有を失えば消滅します。建物の賃借人が支出した必要費の償還請求権のためには建物を留置できますが、造作買取請求権や敷金返還請求権のためには建物を留置できません(建物「に関して」生じた債権ではない・明渡しが先履行だからです)。

先取特権は、法律が定めた特定の債権者に当然に与えられる優先弁済権で、債務者の総財産にかかる一般の先取特権・特定の動産にかかる動産の先取特権・特定の不動産にかかる不動産の先取特権の 3 種類があります。宅建で頻出なのは動産先取特権の一種である不動産賃貸の先取特権で、賃貸人は賃料債権について、賃借人がその建物に備え付けた動産から優先弁済を受けられます。敷金を受け取っている場合は、敷金で弁済を受けられない部分についてのみ先取特権を行使できます。

質権は目的物の引渡しによって効力を生じ(要物契約)、占有改定による引渡しは認められません。不動産質権の特徴は、質権者が目的不動産を使用収益できること(その代わり原則として利息を請求できず、管理費用を負担します)、存続期間が10 年以内に制限されること(更新可・10 年を超える定めは 10 年に短縮)、対抗要件が登記であることです。

担保物権成立・性質試験のポイント
留置権その物に関して生じた債権+占有(法定)優先弁済権・物上代位なし。占有喪失で消滅。造作代金・敷金では留置不可
先取特権法律の定めで当然に発生(法定)不動産賃貸→備付け動産に効力。敷金充当後の残額のみ
質権合意+引渡しで効力発生(約定)不動産質は使用収益可・利息請求不可が原則・存続期間 10 年以内

ひっかけポイント

ここがひっかけ①「抵当権者」と「抵当権設定者」の取り違え 抵当権者=債権者、抵当権設定者=不動産を「どうぞ」と差し出す側です。しかも設定者は債務者本人とは限りません(物上保証人)。問題文の主語がどちらかを最初に確認しましょう。

ここがひっかけ②「6 ヶ月猶予」は賃借権の存続ではない 抵当権設定登記後の建物賃借人が受けられるのは「明渡しの猶予」だけです。賃借権を買受人に対抗できるようになるわけではなく、賃料相当額の支払いも必要です。「登記後の賃借人も 6 ヶ月間は賃借権を対抗できる」という肢は誤りです。

ここがひっかけ③ 消滅請求できない者を問う 抵当権消滅請求は第三取得者の制度です。主たる債務者・保証人・連帯保証人(およびその承継人)は、抵当不動産を買い受けても請求できません。全額弁済すべき立場の者に「値切り」を認める理由がないからです。この 1 点で正誤が決まる出題が繰り返されています。

ここがひっかけ④ 利息「2 年分」の相手方 「満期となった最後の 2 年分」の制限は、後順位抵当権者など他の債権者との関係での優先弁済の上限です。債務者・設定者に対しては 2 年分を超える利息も請求できます。「債務者に対しても 2 年分しか請求できない」は誤りです。

一問一答で総仕上げ

Q1. 抵当権は、債務者以外の第三者が所有する不動産に設定することはできない。(○か×か)

答え: × 債務者以外の第三者(物上保証人)の不動産にも設定できます。この場合、その第三者が抵当権設定者となります。

Q2. 土地に抵当権を設定した場合、その土地上に存在する建物にも抵当権の効力が及ぶ。(○か×か)

答え: × 土地と建物は別個の不動産であり、土地への抵当権は建物には及びません。逆も同様です。

Q3. 借地上の建物に抵当権を設定した場合、その効力は敷地の賃借権には及ばない。(○か×か)

答え: × 敷地の賃借権は建物の従たる権利として、建物の抵当権の効力が及びます。敷地利用権ごと担保しなければ建物の担保価値が保てないからです。

Q4. 抵当権者は、抵当不動産の賃料債権に物上代位できるが、賃料が抵当権設定者に払い渡された後は、その金銭を差し押さえて優先弁済を受けることはできない。(○か×か)

答え: ○ 物上代位は払渡しまたは引渡しの前に差し押さえることが要件です。払渡し後は設定者の一般財産に混入するため、物上代位はできません。

Q5. 後順位抵当権者がいる場合、先順位抵当権者は、利息について満期となった最後の 2 年分を超える部分は債務者に対しても請求できない。(○か×か)

答え: × 「最後の 2 年分」は後順位抵当権者等との関係での優先弁済の制限にすぎません。債務者・設定者に対しては 2 年分を超える利息も請求できます。

Q6. 抵当権設定登記後に賃貸借契約を締結して建物の引渡しを受けた賃借人は、競売による買受人の買受けの時から 1 年間、建物の明渡しを猶予される。(○か×か)

答え: × 明渡し猶予期間は買受けの時から 6 ヶ月です。また、猶予はあくまで明渡しの猶予であり、賃借権を対抗できるわけではありません。

Q7. 更地に抵当権が設定された後、設定者がその土地上に建物を築造した場合において、抵当権が実行され土地と建物の所有者が異なるに至ったときは、建物のために法定地上権が成立する。(○か×か)

答え: × 法定地上権は抵当権設定当時に建物が存在することが要件です。更地として評価して融資した抵当権者の期待を守るため、後から建てた建物のためには成立しません。

Q8. 更地に抵当権を設定した後に建物が築造された場合、抵当権者は土地とともに建物を競売できるが、優先弁済を受けられるのは土地の代金についてのみである。(○か×か)

答え: ○ 一括競売(民法389条)の説明として正しいです。抵当権の目的はあくまで土地なので、建物の代金からは優先弁済を受けられません。

Q9. 抵当不動産を買い受けた主たる債務者は、抵当権消滅請求をすることができる。(○か×か)

答え: × 主たる債務者・保証人およびその承継人は、債務の全額を弁済すべき立場にあるため、抵当権消滅請求はできません。

Q10. 抵当権消滅請求の書面の送付を受けた債権者が、送付を受けてから 2 ヶ月以内に抵当権を実行して競売の申立てをしないときは、第三取得者の提示した金額を承諾したものとみなされる。(○か×か)

答え: ○ 承諾みなしの説明として正しいです。提示額に不満のある債権者は 2 ヶ月以内に競売の申立てをして対抗するしかありません。

Q11. 元本確定前の根抵当権の被担保債権を譲り受けた者は、その債権について根抵当権を行使できる。(○か×か)

答え: × 元本確定前の根抵当権には随伴性がありません。根抵当権は「枠」に付いているため、個々の債権を譲り受けても根抵当権は移転しません。

Q12. 不動産質権者は、目的不動産を使用収益することができない。(○か×か)

答え: × 不動産質権者は目的不動産の使用収益ができます。その代わり原則として利息を請求できず、管理費用を負担します。非占有担保である抵当権との対比で覚えましょう。

まとめ

この章の数字と急所を一覧で確認します。

数字・キーワード内容注意点
最後の 2 年分利息等の優先弁済の範囲(民法375条)債務者・設定者には全額請求可
払渡し前の差押え物上代位の要件払渡し後は不可
6 ヶ月登記後の建物賃借人の明渡し猶予賃借権の対抗ではない・賃料相当額の支払い必要
設定当時法定地上権の判定基準時(建物の存在・同一所有者)更地に後から建物 → 不成立・一括競売可
2 ヶ月消滅請求を受けた債権者の競売申立て期間主債務者・保証人は請求不可
20 年第三取得者・後順位者との関係での抵当権の消滅時効債務者・設定者とは被担保債権と同時のみ
極度額根抵当権の担保の上限(利息も枠内なら制限なし)確定前は付従性・随伴性なし。包括根抵当は禁止
3 年 / いつでも元本確定請求(設定者は 3 年経過後 / 根抵当権者はいつでも)設定者の請求は 2 週間後に確定
元本確定事由根抵当権者の競売等の申立て・滞納処分の差押え/他者の差押えを知って 2 週間/債務者・設定者の破産手続開始確定期日を定めるなら 5 年以内
10 年不動産質権の存続期間の上限質権者は使用収益可・利息請求不可が原則

担保物権は「誰が・いつの時点の・どの価値を」押さえているかを図にすれば必ず解けます。次章では、約束が破られたときのルール — 債務不履行・解除から保証・債権譲渡までの債権総論に進みます。