宅建士合格教科書|2026年度(令和8年度)
第 6 章|例年 3〜5 問出題(業法の最重要テーマ)

重要事項説明(35条書面)と 37条書面

毎年 3〜5 問。35条 vs 37条の対比マトリクスを頭に焼き付ける

この章で学ぶこと

例年 3〜5 問出題される宅建業法の最重要テーマです。最低 3 問、狙いは全問確保です。

重要事項説明の基本 — 誰が・誰に・いつ・どこで

重要事項説明(宅建業法35条)の趣旨は契約前の判断材料の提供です。物件と取引条件のプロである宅建業者が、これから物件を手に入れる素人に「この物件はこういう商品です」と説明し、買うか借りるかを冷静に判断させる。この趣旨から、35条のルールはすべて論理的に導けます。判断材料なのだから契約が成立するまで(前)に、これから取得する買主・借主・交換で取得する者に対して行う。すでに物件を知り尽くしている売主・貸主には交付も説明も不要です。

時間の経過 媒介契約の締結 売買契約の成立 34条の2書面 締結後遅滞なく交付 35条書面(重説) 契約成立までに説明 37条書面 成立後遅滞なく交付 (売買・交換の媒介・代理のみ) 《成立前》宅建士が説明 《成立後》説明は不要・交付のみ
図 6-1 3 大書面は「契約成立」の破線を境に並びます。成立の前に置かれた 35条書面だけが「説明」を伴い、成立の後の 37条書面は交付だけで足りる — 位置がそのまま性格を表します。

説明の主体は宅建士です(宅建士の独占業務)。ただし専任の宅建士である必要はありません。パート勤務の宅建士でも、35条書面に記名した宅建士と説明する宅建士が別人でも構いません。説明の場所には制限がなく、事務所でも相手方の自宅でも喫茶店でも行えます。説明の際、宅建士は請求がなくても宅建士証を提示しなければならず、怠ると 10 万円以下の過料に処されます(請求されたときに提示する通常の提示義務とは別枠の、重説専用の義務です)。なお、売主も媒介業者も宅建業者という取引では、関与する業者全員が説明義務を負います(実務上は書面に連名で記名し、代表して 1 人の宅建士が説明します)。

宅建業者(媒介) 宅建士が書面に記名 A(売主・貸主) B(買主・借主) 売買・賃貸借契約 37条書面 交付のみ 35条+37条書面 35条は宅建士が説明
図 6-2 35条書面が向かう先は権利を取得する B だけ。37条書面は契約した二人の「約束の証拠」なので A・B 双方に渡します。この矢印の非対称が毎年問われます。

例外が 1 つあります。相手方が宅建業者の場合、プロ同士なので説明は不要となり、35条書面の交付だけで足ります。交付自体は省略できず、書面への宅建士の記名も必要です。「業者間だから書面もいらない」は誤りです。

相手方は宅建業者か? 交付のみで足りる(説明不要) 宅建士の記名は省略できない 宅建士が交付して説明する 請求がなくても宅建士証を提示 はい いいえ どちらの場合も 35条書面の交付は必須
図 6-3 「はい」でも消えるのは説明義務だけです。書面の交付と宅建士の記名はどちらのルートでも残ることを、2 つの箱の 2 行目で確認してください。

制裁は 3 つを区別します。説明や交付を怠った業者は監督処分(指示・業務停止等)の対象ですが、35条違反それ自体に罰金の定めはありません。これに対し、重要事項について故意に事実を告げない・不実のことを告げる行為は別条(47条1号)の違反で、2 年以下の拘禁刑または 300 万円以下の罰金という重い罰則が科されます。そして宅建士が宅建士証を提示しなかったときは 10 万円以下の過料です。「35条は罰則なし」と丸暗記すると、故意の不実告知まで無罰と誤解します。

IT重説と電磁的方法による提供

テレビ会議などを使うIT重説は、売買・交換・貸借のすべてで認められています。「貸借はできるが売買はできない」とする肢は誤りです。対面の説明と同等に扱われるための要件は次の 4 つで、説明の途中で映像や音声に支障が生じたときは、説明を中断して回復後に再開しなければなりません。

要件内容
① 双方向の環境図面等の書類を視認でき、音声を双方向でやり取りできる映像・音声環境で実施する
② 書面の事前交付35条書面と添付書類を、説明開始前に相手方へ交付(電磁的提供を含む)しておく
③ 開始前の状態確認相手方が書面等を準備できているか、映像・音声の状態に問題がないかを説明開始前に確認する
④ 宅建士証の提示宅建士証を画面上に提示し、相手方が視認できたことを確認する

また、相手方等の承諾を得れば、35条書面そのものを書面に代えて電磁的方法(電子メール等)で提供できます。このとき宅建士の記名に代わる措置(電子署名等)を講じます。電磁的提供は 34条の2書面・37条書面でも同様に可能で、いずれも承諾が前提です。

35条書面の記載事項 — 売買と貸借の要否マトリクス

記載事項は「①物件に関する事項 → ②取引条件に関する事項」の 2 階建てで整理し、そこに「③区分所有建物の特有事項」「④貸借の特有事項」を上乗せする構造で覚えます。出題の 8 割は売買と貸借の要否の違いです。判定の軸は一つ、「その情報は、借りるだけの人の判断材料になるか」。借主は建物を建てず、買いもしないので、建築や所有にまつわる情報は不要になります。

物件に関する事項売買・交換貸借
登記された権利の種類・内容(抵当権の登記等)必要必要(借りる物件が競売されるリスクは判断材料)
法令に基づく制限の概要(都市計画法・建築基準法等)必要宅地は必要/建物は原則不要
私道に関する負担必要宅地は必要/建物は不要
飲用水・電気・ガス・排水施設の整備状況必要必要
未完成物件の完成時の形状・構造等必要必要
造成宅地防災区域・土砂災害警戒区域・津波災害警戒区域内か否か必要必要
水害ハザードマップにおける物件の所在地必要必要(作成されていなければその旨の説明で足りる)
石綿の使用の有無の調査結果が記録されているときはその内容必要必要(自ら調査する義務はない)
耐震診断を受けた建物はその内容(昭和56年6月1日以降着工は対象外)必要必要(自ら診断する義務はない)
住宅性能評価を受けた新築住宅であるときはその旨必要不要(売買・交換のみ)
既存建物: 建物状況調査の実施の有無と結果の概要必要必要
既存建物: 設計図書・点検記録等の書類の保存状況必要不要(売買・交換のみ)
説明事項 売買・交換 宅地の貸借 建物の貸借 私道負担 ○ 必要 ○ 必要 × 不要 法令に基づく制限 ○ 必要 ○ 必要 原則不要 建物の貸借だけ特別扱い — 借主は建てたり買ったりしないから
図 6-4 「貸借は不要」と一括りにすると誤答します。不要になるのは右端の「建物の貸借」だけで、宅地の貸借はほぼ売買と同じ扱いです(借主がその上に建物を建てるため。ごく一部の制限だけが除かれます)。

既存建物の建物状況調査(インスペクション)は、実施後1 年(鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等は 2 年)以内のものに限り「実施している」として結果の概要を説明します。期間を過ぎた古い調査は説明対象になりません。

時間の経過 調査実施日 1年後 2年後 原則: 実施後 1 年以内 RC・SRC 造の共同住宅(マンション等)は 2 年以内
図 6-5 説明の時点が実施日からこの区間に収まっている調査だけが「実施あり」です。マンションの 2 年への緩和は近年の改正で、昨年に続く連続出題が警戒されます。

続いて取引条件に関する事項です。ここでの最重要ポイントは、代金・借賃そのものの額は 35条の記載事項ではないことです。35条で説明するのは代金・借賃「以外」に授受される金銭(手付金・敷金等)の額と目的。代金の額・支払時期・方法は契約で確定する事項として 37条書面の担当です。

取引条件に関する事項売買・交換貸借
代金・借賃以外に授受される金銭の額・授受の目的必要必要
契約の解除に関する事項必要必要
損害賠償額の予定・違約金に関する事項必要必要
手付金等の保全措置の概要(業者が自ら売主のとき)必要不要
支払金・預り金(50万円以上)の保全措置を講ずるか・その概要必要必要
代金等に関するローンあっせんの内容・不成立時の措置必要不要
契約不適合責任の履行に関する保証保険等の措置を講ずるか・その概要必要不要
割賦販売に係る現金販売価格・割賦販売価格等必要不要

暗記テク 「解除」「損害賠償額の予定」は 35条では定めがなくても説明事項です(定めがなければ「定めなし」と説明・記載)。37条では「定めがあるときだけ記載」に変わります。同じ項目でも書面が違えば扱いが変わる — この対比を一問一答で体に入れましょう。

区分所有建物・貸借に特有の説明事項

マンション(区分所有建物)の売買では、共用部分や管理の情報が生活と資産価値を左右するため、説明事項が上乗せされます。規約は案の段階でも説明が必要、修繕積立金・管理費は滞納額まで説明という 2 点が頻出です。一方、貸借では次の表のうち「専有部分の利用制限規約」と「管理の委託先」の 2 つだけが必要です。ペット禁止などのルールと管理人の連絡先だけ分かれば、借りる判断には足りるからです。

区分所有建物の特有事項売買・交換貸借
敷地に関する権利の種類・内容必要不要
共用部分に関する規約の定め(案を含む)必要不要
専有部分の用途その他の利用制限に関する規約(案を含む・ペット禁止等)必要必要
専用使用権に関する規約(案を含む・駐車場等)必要不要
計画修繕積立金等の規約の定め・すでに積み立てられている額(滞納額を含む)必要不要
通常の管理費用の額(滞納額を含む)必要不要
管理の委託先の氏名・住所(法人は商号・主たる事務所)必要必要
維持修繕の実施状況の記録があるときはその内容必要不要
修繕積立金・管理費を特定の者にのみ減免する旨の規約の定め必要不要
管理者等が管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者である場合はその旨必要不要

2026年法改正 35条の説明事項に追加が 3 つあります。①区分所有建物の売買・交換で、管理者等がマンション管理業者を兼ねている場合(管理業者管理者方式)はその旨を説明(2026年4月1日施行)。管理を受託する会社が管理者も務めると利益相反が起きうるため、買主に知らせる趣旨です。上の表の最終行がこれで、貸借では不要。区分所有法の大改正(第16章)とセットでの出題が警戒されます。②生物多様性増進活動促進法の連携増進活動実施区域内で建築等の制限があるときはその概要(2025年4月1日施行)。③港湾法の協働防護協定・災害応急対策施設使用協定について、その効力が買主等の承継人にも及ぶこと(2025年10月1日施行)。②③はいずれも「法令に基づく制限」への追加なので、建物の貸借では説明不要・宅地の貸借では必要という原則どおりに処理します。

貸借にだけ必要な事項もあります。借主の生活設計に直結する「期間・お金・設備・使い方」の情報です。ここでも宅地の貸借と建物の貸借で範囲がずれます。設備の整備状況は建物の貸借だけ、契約終了時の建物取壊しは宅地の貸借だけで、残りの 4 つは宅地・建物のどちらの貸借でも必要という配分です。

貸借の特有事項ポイント
台所・浴室・便所等の設備の整備状況建物の貸借のみ。借主は自分で変えられないため
契約期間・更新に関する事項定めがなければ「定めなし」と説明
定期借地権・定期建物賃貸借・終身建物賃貸借である旨更新がない契約であることは重大な判断材料
用途その他の利用に係る制限に関する事項宅地・建物の貸借とも必要(売買・交換では不要)。区分所有建物では専有部分の利用制限規約が別枠
敷金その他契約終了時に精算される金銭の精算に関する事項「返還されない金銭」の説明が頻出
宅地・建物の管理の委託先の氏名・住所区分所有建物を除く。宅地の貸借でも必要
(宅地の貸借のみ)契約終了時における宅地上の建物の取壊しに関する定めの内容定期借地の更地返還特約など。建物の貸借では説明事項ではない

供託所等に関する説明(35条の2)

取引で損害を受けた相手方が営業保証金・弁済業務保証金の還付を受けられるように(第4章)、宅建業者は契約が成立するまでに、供託所等を説明しなければなりません。ただしこれは 35条の重要事項説明とは別の制度で、ルールが一段緩いのが特徴です。宅建士でない従業者が説明してもよく、書面の交付義務もありません。そして相手方が宅建業者なら説明自体が不要です — 業者は還付を受けられない(還付対象から除外されている)ので、供託所を教える意味がないからです。ここは 35条と正確に対比してください。35条は業者相手でも「交付」だけは残るのに対し、35条の2 は義務がまるごと消えます。同じ「業者間だから省略」でも、消える範囲が違います。

もう 1 つ、説明の相手方の範囲も 35条とは逆です。35条は「その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し」という限定があるため取得者だけが相手方でした。35条の2 にはこの限定がなく、還付の可能性は売主・貸主の側にもあるので、売主・貸主にも説明が必要です(媒介なら各当事者に)。「35条書面を交付しない売主には供託所等の説明も不要」という肢は誤りです。

項目整理
時期契約が成立するまで(35条と同じ「前」)
説明者宅建業者(宅建士でなくてよい)
説明の相手方相手方等(媒介なら各当事者)=売主・貸主にも必要。35条が取得者限定なのと逆
方法書面交付義務なし・35条書面の記載事項でもない(口頭で足りる)
相手方が宅建業者説明不要(業者は還付を受けられないため)
説明内容(保証協会に未加入)営業保証金を供託した主たる事務所最寄りの供託所と所在地
説明内容(保証協会の社員)社員である旨・協会の名称・住所・事務所所在地・弁済業務保証金の供託所と所在地
ひっかけ供託「額」の説明は不要。供託所と所在地だけでよい

37条書面 — 契約内容を証明する書面

37条書面の趣旨は契約内容の証明です。「言った・言わない」の紛争を防ぐための約束の証拠なので、契約が成立した後、遅滞なく、契約の両当事者(売主・買主、貸主・借主の双方。自ら当事者なら相手方、代理なら相手方と依頼者)に交付します。証拠を渡すだけなので説明義務はなく、交付自体は宅建士でない従業者が行っても構いません。ただし宅建士の記名は必要です(専任不要・押印不要・35条書面と別の宅建士でも可)。相手方が宅建業者でも交付は省略できません — 35条と違い、契約の証拠はプロ同士でも必要だからです。しかも37条書面の交付を怠ると 50 万円以下の罰金が科されます。35条の説明・交付違反に罰金がないのと対照的で、契約内容を残す義務がそれだけ重く見られていると理解してください。

記載事項は 2 層構造です。必要的記載事項は契約の骨格そのもので、定めていないなら定めて必ず記載します。任意的記載事項は「定めがあるときだけ」記載します。

区分記載事項売買・交換貸借
必要的当事者の氏名・住所必要必要
必要的物件を特定するために必要な表示必要必要
必要的代金・交換差金・借賃の額・支払時期・支払方法必要必要
必要的物件の引渡し時期必要必要
必要的移転登記の申請時期必要不要
必要的既存建物: 構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項必要不要
任意的代金等以外の金銭の額・授受の時期・目的定めがあれば定めがあれば
任意的契約の解除に関する定め定めがあれば定めがあれば
任意的損害賠償額の予定・違約金の定め定めがあれば定めがあれば
任意的天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担)の定め定めがあれば定めがあれば
任意的ローンあっせんの定めがある場合の不成立時の措置定めがあれば不要
任意的契約不適合責任・その履行措置(保証保険等)の定め定めがあれば不要
任意的租税その他の公課の負担の定め定めがあれば不要

暗記テク 必要的記載事項は「双方確認・時期・時期・時期」— ①当事者双方が確認した事項(既存建物)②引渡しの時期 ③移転登記の申請時期 ④代金等の額と支払時期・方法。これに当事者と物件の特定を足せば 6 つが揃います。貸借で消えるのは「登記」と「双方確認」— 貸借に所有権移転はなく、建物の傷み具合は貸主が責任を持ち続けるからです。また「天災その他不可抗力」というフレーズは 37条にしか登場しません(35条に出てきたら誤り)。

3 大書面の横断整理 — 34条の2・35条・37条

仕上げに 3 大書面を一望します。迷ったら「書面の性格」に立ち返ってください。34条の2書面は業者と依頼者の仕事の約束、35条書面はこれから取得する人への商品説明、37条書面は契約した二人の約束の証拠です。

35条書面(重要事項説明) 37条書面(契約書面) 契約が成立するまで(前) 時期 成立後、遅滞なく(後) 買主・借主など取得者のみ 相手 契約の両当事者に交付 宅建士が説明(証の提示も) 説明 説明は不要(交付のみ) 共通: 宅建士の記名(専任不要・押印不要)・電磁的方法による提供可
図 6-6 「前・取得者・説明あり」対「後・双方・説明なし」。3 行の対比が崩れた肢は即座に切れます。下段の共通事項(記名・電磁的提供)まで含めて 1 枚で記憶してください。
項目34条の2書面(媒介契約)35条書面(重説)37条書面(契約)
対象となる取引売買・交換の媒介・代理のみ(貸借は不要)すべての取引すべての取引
交付の相手方依頼者買主・借主・取得者(売主・貸主には不要)契約の両当事者
時期媒介契約成立後遅滞なく契約成立まで(前)契約成立後遅滞なく
記名する者宅建業者の記名押印宅建士の記名宅建士の記名
説明不要宅建士が説明不要
相手方が宅建業者のとき交付必要(省略不可)交付のみ(説明不要)交付必要(省略不可)
電磁的方法による提供可(承諾が前提)可(承諾が前提)可(承諾が前提)

ひっかけポイント

ここがひっかけ①「誰に」の入替え 「売主にも 35条書面を交付して説明した」→ そもそも売主は説明の相手方ではありません。「37条書面を買主にのみ交付した」→ 両当事者に交付が必要で違反です。35条=取得者のみ、37条=双方。逆にした肢が毎年のように出ます。

ここがひっかけ②「書いたから省略」の罠 「引渡し時期は重説で説明済みなので 37条書面から省略した」→ 違反です。引渡し時期・代金の額と支払時期はそもそも 35条の記載事項ではなく、37条の必要的記載事項です。35条と 37条は目的が違う別の書面なので、一方に書いても他方は省略できません。

ここがひっかけ③「専任」「押印」「同一人」 35条・37条とも、記名するのは宅建士であれば足り、専任である必要はありません。押印は不要です(数年前の改正済み。古い知識の「記名押印」は誤り)。説明する宅建士と記名した宅建士、35条と 37条の宅建士が別人でも適法です。

ここがひっかけ④「貸借だから不要」の過信 建物の貸借で不要なのは法令上の制限(原則)・私道負担・書類の保存状況・住宅性能評価など「建てる・買う」系だけ。登記された権利・水害ハザードマップ・石綿・耐震診断・建物状況調査は貸借でも必要です。災害と命に関わる情報は、借りる人にも必ず説明すると覚えましょう。

一問一答で総仕上げ

Q1. 宅建業者Aが売買を媒介する場合、Aは買主だけでなく売主に対しても、35条書面を交付して重要事項を説明しなければならない。(○か×か)

答え: × 説明の相手方は物件を取得する買主・借主・交換で取得する者だけです。売主・貸主には交付も説明も不要です。

Q2. 重要事項の説明は、宅建業者の事務所において行わなければならない。(○か×か)

答え: × 説明場所に制限はありません。相手方の自宅でも喫茶店でも構いません。時期(契約成立まで)と方法(宅建士が書面を交付して説明)が守られていれば足ります。

Q3. 重要事項の説明と 35条書面への記名は、成年者である専任の宅建士に行わせなければならない。(○か×か)

答え: × 宅建士であれば足り、専任である必要はありません。「専任の」と入っていたら誤りを疑うのが定石です。

Q4. 重要事項の説明の際、相手方から請求がなかったため宅建士証を提示しなかった宅建士は、宅建業法に違反しない。(○か×か)

答え: × 重説時は請求がなくても宅建士証の提示義務があり、違反には 10 万円以下の過料があります。「請求があれば提示」で足りるのは重説以外の場面です。

Q5. 買主が宅建業者である場合、重要事項の説明だけでなく 35条書面の交付も省略することができる。(○か×か)

答え: × 省略できるのは説明だけです。宅建士が記名した 35条書面の交付は省略できません。

Q6. 建物の貸借の媒介を行う場合、私道に関する負担について説明する必要はない。(○か×か)

答え: ○ 私道負担が不要なのは建物の貸借だけです。売買・交換はもちろん、宅地の貸借では説明が必要です。

Q7. 昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手した建物の売買の媒介では、その建物が耐震診断を受けたものであっても、その内容を説明する義務はない。(○か×か)

答え: ○ 耐震診断の説明対象から、昭和56年6月1日以降に新築工事に着手した建物(新耐震基準)は除かれています。なお対象建物でも、業者に自ら診断を実施する義務はありません。

Q8. 宅建業者は、建物の売買の媒介に際し、自ら石綿の使用の有無を調査した上で、その結果を説明しなければならない。(○か×か)

答え: × 説明するのは「調査の結果が記録されているときはその内容」です。記録がなければ説明義務はなく、業者に自ら調査する義務もありません。

Q9. 区分所有建物の貸借の媒介において、管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者が管理者等を兼ねているときは、その旨を説明しなければならない。(○か×か)

答え: × 2026年4月1日施行の新しい説明事項ですが、対象は売買・交換だけです。区分所有建物の貸借で説明するのは専有部分の利用制限に関する規約と管理の委託先の 2 つだけで、修繕積立金・管理費の額や滞納額と同様、この新事項も貸借では不要です。

Q10. 宅建業者は、37条書面を交付する際、宅建士をしてその記載内容を説明させなければならない。(○か×か)

答え: × 37条書面は契約内容の証拠であり、説明義務はありません。必要なのは宅建士の記名と、両当事者への遅滞ない交付です。

Q11. 売買の媒介において、物件の引渡し時期を 35条書面に記載して説明したときは、37条書面への記載を省略できる。(○か×か)

答え: × 引渡し時期は 37条書面の必要的記載事項であり、省略できません。そもそも引渡し時期は 35条の記載事項ではなく、両書面は目的の異なる別の書面です。

Q12. 建物の貸借の媒介において、損害賠償額の予定に関する定めがない場合、37条書面にその旨を記載する必要はない。(○か×か)

答え: ○ 損害賠償額の予定は 37条では任意的記載事項なので、定めがなければ記載不要です。35条では定めがなくても説明事項(「定めなし」と説明)である点との対比が狙われます。

まとめ

次章は、この 35条・37条と並ぶ業法のヤマ場 — 宅建業者が自ら売主になるときだけ働く 8 種制限です。クーリング・オフの 8 日間から始めます。