この章で学ぶこと
- 「宅地・建物」×「取引」×「業」の 3 要素で免許の要否を判定する技術 — 自ら貸借・転貸は取引に当たらない
- 免許がいらない者(国・地方公共団体、信託会社・信託銀行)とその根拠の違い
- 事務所の数え方(本店は常に事務所)と、知事免許・大臣免許の区分
- 有効期間 5 年・更新は満了の 90 日前から 30 日前まで・免許換えの申請先
- 欠格事由 — 「5 年待つ」グループと「直ちに OK」グループの仕分け、法人の役員への波及
- 変更・廃業等の届出(30 日以内)と、免許失効後も業者とみなされる場面
例年 2〜3 問出題。定義判定と欠格事由はほぼ毎年どちらかが出ます。2 問確保が目標です。
宅建業とは — 「宅地・建物」×「取引」×「業」
宅地建物取引業(宅建業)を営むには、免許が必要です(宅建業法3条)。趣旨は消費者保護 — 不動産は素人にとって一生に一度の高額な買い物だからこそ、参入する事業者をあらかじめ審査してふるいにかける仕組みです。免許は個人でも法人でも受けられ、宅建試験の合格とは無関係です(試験と関係するのは第3章の「宅建士」。「免許」と来たら業者、「登録」と来たら宅建士の話です)。
試験で最初に問われるのは「この行為に免許が必要か」という判定です。判定式は 1 つだけ。①宅地・建物について、②取引を、③業として行う — 3 要素すべてに当てはまれば宅建業(免許必要)、1 つでも欠ければ宅建業ではありません。
「宅地」の定義 — 場所で判定が変わる
宅地とは、①建物の敷地に供せられる土地と、②用途地域内のその他の土地(ただし現に道路・公園・河川・広場・水路である土地を除く)をいいます(宅建業法2条1号)。ポイントは登記上の地目や現況は一切関係ないことです。①には「現に建物が建っている土地」だけでなく「将来建物を建てる目的で取引される土地」も含まれます。
| 土地の場所 | 宅地に当たる | 宅地に当たらない |
|---|---|---|
| 用途地域内 | 原則すべて(畑・駐車場・資材置場でも宅地) | 現に道路・公園・河川・広場・水路である土地 |
| 用途地域外 | 建物の敷地に供せられる土地(現に建物が建つ土地+建てる目的で取引される土地) | 建物と無関係な土地(山林のままの取引など) |
場所で結論が変わることを、太陽光パネルの設置用地で確かめておきましょう。用途地域外の土地をパネル設置目的で売買しても、建物の敷地に供する目的ではないので宅地に当たりません。ところが同じ目的でも用途地域内の土地なら、道路・公園・河川・広場・水路でない限り宅地です。「何に使うか」から入らず「まず場所を見る」が鉄則です。
暗記テク 用途地域内でも宅地にならない 5 つは「どこが公水(どうろ・こうえん・かせん・ひろば・すいろ)」。このゴロは「用途地域内の例外 5 つ」とセットで唱えます。結論とセットにしないゴロは本番で使えません。
「建物」の定義
建物は、土地に定着し屋根と柱(または壁)を持つ工作物です。マンションの一室のような建物の一部も建物に含まれ、その売買の媒介などは宅建業になり得ます。居住用である必要はなく、倉庫・工場・別荘も建物です。他方、屋根も柱・壁も持たない野立てのソーラーパネル(太陽光発電設備)自体は建物ではありません。
「取引」の定義 — 自ら貸借だけが抜けている
取引とは、①自ら当事者として行う売買・交換、②売買・交換・貸借の代理、③売買・交換・貸借の媒介をいいます。マス目で覚えるのが最速です。
| 行為 | 自ら | 代理 | 媒介 |
|---|---|---|---|
| 売買 | ○ 取引 | ○ 取引 | ○ 取引 |
| 交換 | ○ 取引 | ○ 取引 | ○ 取引 |
| 貸借 | × 取引ではない | ○ 取引 | ○ 取引 |
9 マスのうち「自ら貸借」の 1 マスだけが取引から外れています。ここが本章最大の頻出点です。自分が貸主となって貸す行為は、規模がどれほど大きくても宅建業ではありません。大家業(不動産賃貸業)に免許は不要ですし、他人から借り上げた建物を自ら貸主として転貸(また貸し)する行為も「自ら貸借」なので免許不要です。貸借の場合、借主は住みながら相手の対応を見極められるため、売買ほど手厚く保護する必要がない — と趣旨から理解しておくと忘れません。なお、贈与はそもそも売買でも貸借でもないため取引に当たりません。
代理・媒介にはもう 1 つ重要な論点があります。代理とは依頼者に代わって契約を締結すること、媒介とは契約の相手方を探して引き合わせること(仲介)ですが、いずれの場合も契約の効果は依頼者本人に帰属します。したがって、自分の土地を区画割りし、販売代理や媒介を宅建業者に丸投げして不特定多数に分譲する場合、依頼した本人にも免許が必要です。「業者に任せたから自分は免許不要」という肢は誤りです。
「業」の定義
業とは、不特定多数の者を相手方として、反復継続して行うことです。「分譲」は反復継続の典型例です。逆に、自己所有の土地を一括して 1 社に売却するのは 1 回限りの行為なので業に当たらず、免許不要です。また、購入の相手方が国などに特定されていても、転売先が不特定多数なら業に当たります。なお、業該当性は総合判断のため、試験では明らかなケースしか出ません。深入りは不要です。
判定の事例演習
| 事例 | 判定 |
|---|---|
| 自己所有の賃貸マンション各室を不特定多数に反復継続して賃貸 | 免許不要(自ら貸借は取引でない) |
| 一棟借りした建物を不特定多数に反復継続して転貸 | 免許不要(転貸も自ら貸借) |
| 自己所有地を区画割りし、業者に代理・媒介を依頼して分譲 | 本人にも免許必要(効果は本人に帰属) |
| 自己所有地を一括して 1 社に売却 | 免許不要(反復継続でない) |
| 国から宅地を反復継続して買い受け、不特定多数に転売 | 免許必要(転売先が不特定多数) |
| 建設業・マンション管理業・宅地造成業・不動産鑑定業 | 免許不要(そもそも取引でない) |
免許がいらない者
3 要素を満たしても、例外的に免許なしで宅建業を営める者がいます。理由が違う 2 グループを区別してください。国・地方公共団体は宅建業法そのものが適用されないのに対し、信託会社・信託銀行は免許の規定だけが適用除外で、国土交通大臣への届出が必要です。届出をした信託会社は大臣免許の業者とみなされ、免許以外の規制(営業保証金・重要事項説明など)には服します。
| 主体 | 免許 | ポイント |
|---|---|---|
| 国・地方公共団体(都市再生機構・地方住宅供給公社もこれに準ずる) | 不要 | 宅建業法の適用自体がない |
| 信託会社・信託銀行 | 不要 | 国土交通大臣への届出が必要。免許以外の規定は適用される |
| 破産管財人(破産財団の換価のための売却) | 不要 | 裁判所の監督下で行われるため |
| 農業協同組合など上記以外の団体 | 必要 | 特例はない。「公的っぽい名前」に騙されない |
事務所の数え方と免許の区分
免許は、事務所が 2 つ以上の都道府県にまたがれば国土交通大臣免許、1 つの都道府県内に収まれば知事免許です(宅建業法3条1項)。分かれ目は「またがるか」だけであり、事務所の数・資本金・従業員数は関係ありません。甲県内に本店と支店 15 か所があっても甲県知事免許です。
そこで「事務所」の数え方が前提になります。事務所とは、①本店(主たる事務所)、②宅建業を営む支店、③継続的に業務を行える施設で宅建業の契約締結権限を持つ使用人を置く場所です。最重要は①と②の関係 — 本店は、支店で宅建業を営んでいる限り、本店自身が宅建業をしていなくても常に事務所として扱われます。逆に宅建業を営まない支店は事務所ではありません。
注意すべきは、知事免許でも業務範囲は全国だということです。甲県知事免許の業者が乙県の物件を売買・媒介することは自由で、乙県に事務所を設置しない限り免許換えも不要です。「知事免許=その県内でしか営業できない」という日本語の先入観を突く出題が繰り返されています。また、免許の申請は免許権者に対して行い、大臣免許も現在は知事を経由せず国土交通大臣へ直接申請します。
有効期間 5 年・更新・免許換え
免許の有効期間は、知事免許・大臣免許とも5 年です(「知事は 3 年」とする誤り肢の出題歴があります)。引き続き営業するには更新が必要で、申請期間は有効期間満了の日の 90 日前から 30 日前までです。
更新の細部も肢になります。期間内に申請したのに満了日までに処分(可否の判断)が出ない場合、処分があるまで従前の免許が効力を持ち、更新後の免許の有効期間は従前の満了日の翌日から起算して 5 年です。また、業務停止処分の期間中でも更新は受けられます。有効期間が満了しても、業者の免許証に返納義務はありません(お客に提示して使う宅建士証には返納義務がある点と対比。第3章)。
免許換え — 「取り直し」のイメージ
事務所の新設・廃止・移転によって、あるべき免許の種類(知事⇄大臣、甲県知事⇄乙県知事)が変わったときは免許換えが必要です。名前は「換え」ですが、実態は新しい免許権者へ新規に免許を取り直す手続で、申請先は必ず新免許権者です。新免許を受けると従前の免許は失効し、有効期間は免許換えの日から新たに 5 年(残存期間の引継ぎではない)。免許換えが必要なのに放置していると、必要的免許取消しの対象になります。
| 事由 | 例 | 申請先 |
|---|---|---|
| 知事 → 大臣 | 甲県のみ → 乙県にも事務所を新設 | 国土交通大臣(直接申請) |
| 大臣 → 知事 | 乙県の事務所を全廃し甲県のみに | 甲県知事 |
| 知事 → 他の知事 | 甲県の全事務所を廃止し乙県へ移転 | 乙県知事 |
なお、免許権者は免許(更新を含む)に条件を付し、変更することができます。条件違反は免許取消し(任意的)の対象です。免許は一身専属で、相続や合併で承継することはできません。
免許の欠格事由 — 「誰が」「いつまで」ダメか
欠格事由(宅建業法5条)は、「どんな事情ならダメか(中身)」と「誰までチェックされるか(範囲)」を分けて整理します。まず中身の核心は、「5 年待つ」グループと「直ちに OK」グループの仕分けです。
2026年法改正 刑法改正により「懲役」「禁錮」が拘禁刑に一本化されました(2025年6月1日施行)。宅建業法の欠格事由も「拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から 5 年を経過しない者」と読み替えられています。欠格期間 5 年と、罰金刑で欠格となる対象犯罪に変更はありません。「懲役に処せられ…」という旧文言の肢はもう出ない前提で、新用語のまま覚えてください。
刑罰による欠格は、刑の重さで整理します。拘禁刑以上なら罪名を問わず欠格。罰金刑は宅建業法違反・暴力団対策法違反・暴力系の罪(傷害・傷害現場助勢・暴行・凶器準備集合・脅迫・暴力行為等処罰法違反)・背任罪に限って欠格です。つまり「罰金が来たら罪名を見ろ」— 詐欺罪・私文書偽造・過失傷害・道路交通法違反の罰金では欠格になりません。科料・拘留はそもそも軽すぎて欠格になりません。
| 欠格事由 | いつまでダメか | 注意点 |
|---|---|---|
| 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない | 復権まで | 復権を得れば直ちに OK(+5 年は誤り) |
| 拘禁刑以上の刑 | 執行終了等から 5 年 | 罪名不問。執行猶予は満了で直ちに OK。控訴・上告中は欠格でない |
| 一定の罪による罰金刑 | 執行終了等から 5 年 | 宅建業法違反・暴力団対策法違反・暴力系の罪・背任罪に限定 |
| 三大悪事由による免許取消し | 取消しの日から 5 年 | ①不正手段で免許取得 ②業務停止事由で情状特に重い ③業務停止処分違反。法人の場合、聴聞公示日前 60 日以内の役員も 5 年欠格 |
| 聴聞公示後の相当の理由ない解散・廃業の届出 | 届出の日から 5 年 | 処分逃れの「駆け込み廃業」封じ。死亡・破産の届出は対象外。法人では聴聞公示日前 60 日以内の役員も 5 年欠格 |
| 暴力団員等 | 暴力団員でなくなってから 5 年 | 暴力団員等が事業活動を支配する者も欠格 |
| 心身の故障により宅建業を適正に営めない者 | 該当する間 | 制限行為能力者になったら即欠格、ではない(個別判断) |
| 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者 | — | 法定代理人(法定代理人が法人ならその役員を含む)が欠格のときだけ免許不可。営業の許可を受けた未成年者は本人のみ審査 |
| 役員・政令で定める使用人に欠格者がいる法人(個人業者の政令使用人も同じ) | 欠格者がいる間 | 非常勤役員も「役員」。該当者が退けば免許 OK |
| 免許申請前 5 年以内に宅建業に関し不正または著しく不当な行為をした者 | 行為から 5 年 | 無免許営業などが典型 |
| 宅建業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者 | おそれがある間 | 過去の行為ではなく将来のおそれで判断する類型 |
| 事務所について専任の宅建士の設置要件を欠く者 | 要件を満たすまで | 専任宅建士が足りない事務所があると免許を受けられない(設置義務は第3章) |
「範囲」のチェックも整理しましょう。法人の免許審査では法人自身・役員・政令で定める使用人(支店長など)が対象になり、1 人でも欠格者がいれば法人は免許を受けられず、免許後に該当すれば取消しです。ただし方向に注意 — 法人が三大悪事由で取り消された場合に 5 年欠格を引き継ぐのは聴聞公示日前 60 日以内の「役員」だけで、政令で定める使用人は引き継ぎません(経営をコントロールする立場ではないため)。この非対称は個数問題で狙われます。また、欠格の原因だった暴力団員の役員が退任すれば、法人自体はその後免許を受けられます。
変更の届出・廃業等の届出と「みなし業者」
免許を受けた業者の情報は宅建業者名簿に登載され、誰でも閲覧できます。もっとも、届け出るべき事項と名簿に載る事項はイコールではありません。変更の届出の対象は、免許申請書の記載事項のうち次の 5 つに限られ(宅建業法9条・4条1項1号〜5号)、変更が生じた日から30 日以内に免許権者へ届け出ます。
- ① 商号または名称
- ② 法人の場合 — 役員の氏名/政令で定める使用人の氏名
- ③ 個人の場合 — その者の氏名/政令で定める使用人の氏名
- ④ 事務所の名称・所在地
- ⑤ 事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名
本試験で効くのは⑤です。専任の宅建士が交代・退職・増員したときは、業者が30 日以内に変更の届出をしなければなりません。他方、役員の住所の変更や兼業の業種の変更は届出不要です。兼業の種類は名簿には登載されるのに届出は不要(4条1項6号は9条の対象から外れています)、逆に専任宅建士の氏名は届出が必要なのに名簿には登載されない(8条2項2号が4条1項5号を除いています)という、ねじれた関係になっています。「名簿に載る=届け出る」ではないと割り切って、届出の対象は上の 5 項目で覚えてください。なお、宅建士本人が行う「変更の登録」は期限が遅滞なくで別物です(第3章で対比します)。
廃業などで免許が不要になったときは廃業等の届出です。「誰が・いつまでに・免許はいつ失効するか」をセットで覚えます。
| 事由 | 届出義務者 | 期限 | 免許の失効時期 |
|---|---|---|---|
| 死亡 | 相続人 | 知った日から 30 日以内 | 死亡の時 |
| 法人の合併消滅 | 消滅した法人の代表役員だった者 | 30 日以内 | 合併の時 |
| 破産手続開始の決定 | 破産管財人 | 30 日以内 | 届出の時 |
| 解散(合併・破産以外) | 清算人 | 30 日以内 | 届出の時 |
| 宅建業の廃止 | 個人本人・法人の代表役員 | 30 日以内 | 届出の時 |
ひっかけどころは 2 つ。死亡は「死亡の日から」ではなく相続人が知った日から 30 日、合併は存続会社ではなく吸収された側(消滅会社)の元代表役員が届け出る、という点です。失効時期は、死亡・合併はその事実の時、その他は届出の時と分かれます。
では、免許が失効した瞬間に進行中の取引はどうなるのか。免許は一身専属で相続人や存続会社に承継されませんが、失効前に締結した契約については、業者だった者やその一般承継人(相続人・存続会社)が、取引を結了する目的の範囲内でなお宅建業者とみなされます(みなし業者)。買主を置き去りにしないための規定で、有効期間満了や免許取消しの場合も同様です。
無免許営業・名義貸しの禁止
免許なしに宅建業を営むことは当然禁止ですが、規制はもう一歩手前から始まります。無免許の者は、宅建業を営む旨の表示・広告をするだけで違反です(免許申請中でも同じ)。また、業者が自己の名義で他人に宅建業を営ませる名義貸しも、営ませた場合だけでなく表示・広告をさせた段階で違反になります。罰則は、無免許営業・名義貸しによる営業が3 年以下の拘禁刑もしくは 300 万円以下の罰金(または併科)、表示・広告にとどまる場合が100 万円以下の罰金です。
ひっかけポイント
ここがひっかけ①「自ら貸借」は他のテーマにも紛れ込む 「賃貸マンション 30 戸を反復継続して貸すAには免許が必要」→ ×。転貸でも×。出題者は「反復継続」「不特定多数」という業っぽい言葉で規模感を煽ってきますが、自ら貸主である限り取引に当たりません。逆に、貸借でも代理・媒介なら取引です。
ここがひっかけ② 知事免許=県内限定、ではない 「甲県知事免許のAは乙県内の物件を媒介できない」→ ×。業務範囲は全国です。免許換えが必要になるのは乙県に事務所を設置したときだけ。「営業する場所」と「事務所を置く場所」を混同させるのが定番の作り方です。
ここがひっかけ③ 数字の入替え — 90/30 日・30 日・「知った日」 更新は「満了の 90 日前から 30 日前まで」、変更・廃業等の届出は「30 日以内」、死亡だけ「相続人が知った日から 30 日以内」。「死亡の日から 30 日」「満了の 2 週間前まで」のような入替え肢は、数字と起算点の両方を確認して切ります。専任の宅建士が交代したときの変更の届出も「30 日以内」で、専任宅建士が不足した事務所を「2 週間以内」に補充する義務(第3章)とは別の話です。この 2 つを取り違えさせる肢が定番です。
ここがひっかけ④「直ちに OK」に 5 年を足させる 復権を得た破産者・執行猶予期間を満了した者は直ちに免許を受けられます。「復権から 5 年」「猶予満了から 5 年」はすべて誤り。なお「執行猶予が付されたから直ちに OK」も誤りで、満了が必要です。控訴中・上告中は刑が未確定なので欠格ではありません。
一問一答で総仕上げ
Q1. Aが、自己所有の賃貸マンションの各室を不特定多数の者に反復継続して貸す行為は宅建業に当たり、Aは免許を受けなければならない。(○か×か)
答え: × 自ら貸主となる貸借は「取引」に当たりません(宅建業法2条2号)。不特定多数・反復継続でも宅建業ではなく、免許不要です。
Q2. Bが、建物の所有者から一棟を借り上げ、自ら貸主として不特定多数の者に反復継続して転貸する場合、Bは免許を受けなければならない。(○か×か)
答え: × 転貸(また貸し)も、転借人に対してはB自身が貸主です。「自ら貸借」に当たるため取引ではなく、免許不要です。
Q3. 用途地域内に存する現況が資材置場の土地(地目は雑種地)を、不特定多数の者に反復継続して売却する行為には、免許が必要である。(○か×か)
答え: ○ 用途地域内の土地は、道路・公園・河川・広場・水路を除き、地目・現況を問わずすべて宅地です。宅地の自ら売買を業として行うので免許が必要です。
Q4. Cが自己所有の宅地を 20 区画に分け、売買の媒介を宅建業者Dに依頼して不特定多数の者に売却する場合、販売活動を行うのはDであるから、Cは免許を受ける必要がない。(○か×か)
答え: × 媒介・代理を依頼しても、売買契約の効果は売主Cに帰属します。C自身が業として売買を行うことになるため、CにもDにも免許が必要です。
Q5. 信託業法3条の免許を受けた信託会社が宅建業を営もうとする場合、国土交通大臣の免許を受けなければならない。(○か×か)
答え: × 信託会社・信託銀行には免許の規定が適用されず、国土交通大臣への届出で足ります(宅建業法77条)。届出後は大臣免許の業者とみなされ、免許以外の規定には服します。
Q6. 甲県内にのみ本店と支店 10 か所を設置して宅建業を営む法人は、事務所の数が多いため、国土交通大臣の免許を受けなければならない。(○か×か)
答え: × 免許の区分は事務所が 2 以上の都道府県にまたがるかだけで決まります。すべて甲県内なら、数がいくつでも甲県知事免許です。
Q7. 甲県知事免許の宅建業者Aは、乙県内に事務所を設置しない限り、乙県内に所在する宅地の売買の媒介を業として行うことができる。(○か×か)
答え: ○ 知事免許でも業務範囲は全国です。乙県に事務所を設置したときに初めて、国土交通大臣への免許換えが必要になります。
Q8. 免許の更新を受けようとする宅建業者は、有効期間満了の日の 2 週間前までに免許申請書を提出しなければならない。(○か×か)
答え: × 更新の申請期間は、有効期間満了の日の90 日前から 30 日前までです。なお、期間内に申請すれば満了後も処分が出るまで従前の免許が有効です。
Q9. 破産手続開始の決定を受けた個人Eは、復権を得てから 5 年を経過しなければ、免許を受けることができない。(○か×か)
答え: × 欠格となるのは「復権を得ない者」です。復権を得れば直ちに免許を受けられ、5 年待つ必要はありません。
Q10. 宅建業法違反により拘禁刑 1 年・執行猶予 2 年の刑に処せられたFは、猶予期間が満了しても、その日から 5 年を経過しなければ免許を受けることができない。(○か×か)
答え: × 執行猶予期間を満了すれば刑の言渡し自体が効力を失うため、直ちに免許を受けられます。5 年待つのは実刑や罰金刑の執行を終えた場合です。
Q11. G社が業務停止処分に違反したことを理由に免許を取り消された場合、聴聞の公示日前 60 日以内にG社の政令で定める使用人であった者は、取消しの日から 5 年間免許を受けることができない。(○か×か)
答え: × 三大悪事由による法人の免許取消しで 5 年欠格を引き継ぐのは、聴聞公示日前 60 日以内の役員だけです。政令で定める使用人は対象外です。
Q12. 個人の宅建業者Hが死亡した場合、Hの相続人は、死亡の日から 30 日以内に、その旨を免許権者に届け出なければならない。(○か×か)
答え: × 死亡の届出は、相続人が死亡の事実を知った日から 30 日以内です。なお免許は死亡の時にすでに失効しており、相続人は取引結了の目的の範囲内でのみ業者とみなされます。
まとめ — この章の数字と急所
| 数字・キーワード | 場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 5 年 | 免許の有効期間(知事・大臣とも)/欠格事由の欠格期間 | 「知事は 3 年」は誤り |
| 90 日前〜30 日前 | 更新の申請期間 | 業務停止期間中でも更新可 |
| 30 日以内 | 変更の届出(専任宅建士の交代を含む)・廃業等の届出 | 死亡のみ「知った日」から起算 |
| 60 日 | 三大悪事由取消し時に遡って欠格となる役員の在籍期間 | 政令で定める使用人は対象外 |
| 直ちに OK | 復権を得た破産者・執行猶予期間の満了 | 「+5 年」を足す肢は誤り |
| 自ら貸借 | 取引に当たらない唯一のマス | 転貸も含む。大家業は免許不要 |
| 本店 | 宅建業を営まなくても常に事務所 | 宅建業を営まない支店は事務所でない |
免許制度は「業者」への入口規制でした。次章では、実際に取引の現場で重要事項説明などを担う個人資格 —「宅建士」の登録・宅建士証の制度を、この章との対比を軸に固めます。